第7話 ファイト!-7
美亜は一晩警察に保護された後、母親同伴で説教を受けて帰宅した。一晩明けて帰って来た家は、妙に雑然としているように見えた。昨日の乱闘の時、蹴散らかしただけではなく、内職の衣類や、何よりも生活の疲れがそここに散らばっているようだった。美亜が立ち尽くしているのを見て、みづえはどうしたのと問い掛けたが、美亜は、別に、とだけ答えて掃除を始めた。
「どうしたの、急に」
「なんか、散らかってるなって、そう思っただけ」
みづえは部屋を見回し、そうねと言って片づけ始めた。
「ね、美亜」
部屋を片づけながらみづえは訊ねた。
「お父さんのこと、嫌い?」
「……ん」
「お父さんと、別れた方がいい?」
「……好きにすれば」
「あなたが、嫌ならそうするわ」
「あたいは、どっちでもいいよ。そんなの母さんの決めることだよ」
「…そうね」
「そうさ」
「……お父さん、いまは、あんなだけど、……もう少し我慢して…。そしたら……」
「いいよいいよ。母さんの好きなようにしたら」
「……ね、少しくらい…、いいと思わない?いままで、頑張って働いてくれてたんだから」
「…だけど……。いいよ、好きにしてよ。あたいは、あたいのやりたいようにする。また金目当てで来たら、追い出してやる。それだけ」
美亜はそう言うと掃除機のスイッチを入れた。その音でみづえの言葉はかき消されてしまった。しかし、楽しそうに掃除をする美亜を見ると、みづえはもう何も言う気にならなかった。
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