第14話
「やべー。逃げられねー。それより、俺って」
その確信はふとした疑問から変化した。
好きなのだ、あの娘のことが。
だから、失いたくなくて。
自分だけのものにしたくて。
手放さないように、壊れないように大事にしたくて。
それでいて、彼女はこれから先も……いや、自分がこれから先もずっと彼女の一番になれることはないってことを、心のどこかで自覚しつつ。
あんなことを言った。
全校集会で告白しろなんて、あんな馬鹿みたいなことを。
もう一つわかっていた。
季美はしないだろう、ということも。
そうしても、抱介の心は手に入らないと彼女は知っているから。多分、やらない。
「でも、俺はあいつが欲しい。俺がおかしいんじゃん」
季美の妖しげで危険な視線と肉体と香りが脳内で交錯する。
これ以上、関わるな。
そう本能は告げているのに、抱介は慄然として受け入れることができない。
自分の本心を。
少年の理解を越えた幼い恋のような、そうでない獣のような何か。
比較され、優劣を判じられて、一番になれないことへの悔しさ。
そんなものが頭の中にまとわりついて、離れて行かない。
「明日、あいつ……言うかな?」
ひとり、誰に言うともなく、抱介はそう呟いてから、ベッドにもぐりこんだ。
その日の夜、抱介は色々なことが気になって寝ることができなかった。
そして翌日。
季美は見事に――告白をしなかった。
でも、放課後に会いたいとメッセージが送られてきた時には、怒りとか悔しさとか、そんなものは消えていて。
「今夜、暇?」
その質問が何を意味するかは、なんとなくわかっていて。
だからこそ、彼女の部屋でその温もりに抱かれた時。
抱介のまともなほうの心は、あっけなく砕かれてどこかに消え去ってしまったのだった。
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