11月3日『かぼちゃ』

「いい匂いだね。パンプキンスープ?」


 夕方、私がキッチンで鍋の前に立っていると、ラビン師匠が声をかけてきた。


「はい。村のヘレナおばさんにいつものお薬を届けに行ったら、代金とは別にカボチャを頂いたので」

「なるほど。おすそわけか」

「立派なカボチャで持ち帰るのにちょっと苦労しましたけどね。さっき味見したし、おいしくできていると思いますよ」


 鍋のパンプキンスープをおたまでゆっくり混ぜ続ける。湯気と共にカボチャの甘い匂いがふんわりと広がった。


「ティアは料理上手だよね。君がいてくれて助かるよ」

「師匠は料理苦手ですもんね。薬の調合は得意なのに」

「僕だって簡単なものは作れるよ?手の込んだ料理が苦手なだけで」

「私が弟子入りしたばかりの頃は、師匠が三食作ってくれていたけれど……。トーストに目玉焼きに野菜の切れ端スープばかり食べていましたよね」

「懐かしいなぁ」

「たまには、また師匠が作ってください」

「え。それはいいけど、同じものしか作れないよ?」


 ラビン師匠は魔法使いとして有名で一流なのに、人の感情や心をみ取ることにはうといところがある。

 私は小さく苦笑してしまった。


「師匠。私は師匠の作るごはん、好きですよ。だって、あなたが私のために作ってくれるんですから」

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