秋の章

弐拾漆

「行ってきます」

 玉穂は黒のランドセルに水着の入った水泳バッグや夏休みの提出物を抱えて家を後にした。

 臨海学校直後に稲荷餅の総買収計画は事実上、玉穂達稲荷餅の商店連合の勝利で終わった。後々明らかになったことだが、買収を企んでいた企業は過去に多くの都市買収計画を立案、提示を繰り返しては再開発の工事などを行わなかったり、野放しにしたりなど問題が噴出していた会社だった。

 その他にも法的に違反した事例が多数あったため、警視庁は取締役社長などから事情聴取、家宅捜索などを行い、社員や関連企業が続々と逮捕されて行っている。

 祭り終了後、外宮には甘味処・玉月の常連であり玉穂や伊久実。特に、こむぎと仲の良いイケメン刑事さん達刑事さん達がやって来た。

 そちらでも、出店業者へ事情聴取を行っていた。

 しかし、その時にはほとんどの屋台は立ち退いていた。

 玉穂達はこれ以上小学生の立場でも、稲荷餅に店を置く店主(仮)としても介入はできないということで今後の動向を見守ることにしている。

 それは、イケメンの刑事さんからも同じことを言われた。

「三人とも、今日は頑張ったね。でも、これ以上は未成年の君達は踏み込んではいけないし、危険があるかもしれないからね。後は僕たちに任せて」

「はい、みなさん。お久しぶりですね。夏休み中はゆっくりできましたか?中にはこの町を守るためにもえていた方たちも何人かいらっしゃと思いますが、夏休みの宿題たちはしっかりと、提出してくださいね」

 教卓に鎮座する担任は玉穂、こむぎ。特に伊久実をプレッシャー満点の眼光が差す。

「では、順番に提出してください」

 生徒達は名簿番号順に教卓上に提出を分けて提出した。

「あら~~、伊久実さ~~ん。どうやら、宿題はしてきたようね」

 担任は癖の強い口調で話した。

「先生、私は今回は皆の力を使って宿題はしたので、今まで通りの私ではないですよ」

「まあ、後半の学年になって伊久実さんを担当しましたが、最後の最後はきちんとやることは提出してくれたので、まあ。いいでしょう」

 二年半近く二人の間にあった不満という名のしこりは解消されたように玉穂には見えた。

 三人はお祭り前と期間中はあまりの忙しさに学校の課題に取り組めなく、お店の休業日を使い、三人は予定を合わせ日によって、各家に集まっては宿題、自由研究、新聞、絵日記を書いていた。

 玉穂とこむぎは新聞を選択し、今回の夏祭りの事を書いた。新聞の記事下には、一般の新聞でも掲載されている広告がある。玉穂とこむぎはちゃっかりとお店の宣伝をした。

 伊久実は今回の夏祭りで上げた業績と経営理論というビジネス方面の文面と図をまとめた。

 提出物も終わり、深まる秋が始まる。

「ねえ。なんか、狩りに行かない?」

 給食を食べている中、伊久実はまた突飛推しも無いことを言い出した。

「私達小学生だし、免許持ってないわよ」

 現実的な見解を示す玉穂。

「いや、食堂の常連さんの知り合いで栗とか、マツタケの仙人がいるんだって」

 伊久実の言葉に、こむぎは断崖絶壁の頂点に住む長いひげを生やした仙人が住んでいるものだと妄想した。

「むぎ、間違っても拳法とか、谷の上に住んでいるとか勘違いしないでね」

「ちょうど、その妄想をしていたところだよ。えへへ」

 伊久実にはこむぎの妄想を軽々と見破られてしまった。

「今度、スケジュール揃えて行ってみない?」

「まあ、今後のメニューに反映されることも考えてちょっと、行ってみようかしら」

「うん、行きたい!!」

 三人は後日。予定を揃えて秋の食物の採取をすることを約束した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しらたま物語 -白月玉穂の章- 【短編版】 忽那 和音 @waonkutsuna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ