甘味処・玉月の店主(仮)の白月 玉穂。

 先日までお花見の料理作りとお花見祭りに追われ、クタクタに疲れ果てた玉穂に久々の週末休暇が来た。

 だが、今回の休日は家でダラダラするようなものではない。


 お祭りの打ち上げ。

 友人で飯森食堂の看板娘・飯森 伊久実から何故か玉月の常連客であるイケメン刑事さんのお姉さんからデートのお誘いが来た。

 しかし、まだ玉穂には交際経験が無い。しかも、女性からデートだと言われると大人の階段を何段も踏み越えていくような感覚に玉穂は思えた。


(とりあえず、イケメン刑事さんのお姉さんだから、きっと優しいだろう)

 玉穂は簡単な考えでその提案を承諾した。

 情報によるとお姉さんはイケメン刑事さんの5歳年上。可愛い女の子が大好きで弟のイケメン刑事さんではなく、妹が欲しかったというほどの可愛い女の子好きだ。


 玉穂は待ち合わせの稲荷餅内で最も大きい駅の北口で待った。

「あ、あの~~」女性から声を掛けられた。

「はい?」玉穂は返事をした。

「白月……玉穂ちゃんですか?」

「はいそうです」

「あっ、弟がいつもお世話になっています」

 話かけてきた女性は腰まである水色より白いに巻いた髪。緑よりの青のガウチョパンツに白いシャツ。左にはブランド物のバッグをかけている。

 顔つきや雰囲気はどこかイケメン刑事さんに似ていた。

「では、行きましょうか」

「はい!」

 最終目的地は駅から数分電車に乗った先の県庁所在地の駅ビル。


「めんどくさくない?」

 イケメン刑事さんのことをお姉さんから聞かれた。

「いいえ、とても頼りになっています。とくに私の友人は特に刑事さんに、お世話になっているというか……」

 友人というのは、麦荳 こむぎのことだ。しかも、その出会いが甘味処・玉月となるとは、思わなかった。

 今後の二人の関係についてどうなるかは分からないが、進展があれば玉穂は所謂、愛のキューピットとなる。

 それはまだ、イケメン刑事さんのお姉さんには言えないこと。こむぎはまだ玉穂と同い年の小学校六年生。まだ大人のイケメン刑事さんと付き合える年ではない。

「そう、良かったわ。刑事なんだけど、全然刑事らしくなくて……。でも、今の仕事に着いてもらって少しは成長したかなって、少しは誇りに思っているんだ」

「刑事さんは私達にとって本当に頼りになる人です」

「なら、良かったわ。これからもめんどくさいけど、弟をお願いね」

「はい」


 目的地の駅に着いた。

 ここでは、お姉さんのショッピングに付き合うということになっているが、詳細の予定は分からない。

「よーし、最初はここ!」

「つぎ!」

「次!」

「つーぎぃー!」

 怒涛のショッピングだった。午前中に三十軒もお店を回る人はいるのだろうか。

 洋服、雑貨、バッグ、宝石、日用雑貨。

 デパートやショッピングモールのようなところに行くことがほとんどない玉穂にとってはとても新鮮なものだった。


 昼食の時間となり、二人は駅付近で有名なフレンチレストランへ入った。

「今回は私のおごりよ~~。まだ小学生なのに働いている玉穂ちゃんにお姉さんから大サービスだから感謝してね!」

 言うなり、見知らぬ食べ方も分からない料理に玉穂は戸惑う。

「あの~~、この料理はどう食べれば……」

「あ~~、これはね。こうして、こうだよ」

「なるほど~~」

「こういう、大人びたお店は初めてな感じでお姉さん可愛い女の子に教えられて嬉しいな~~」

 女性は心の底から嬉しいのだろうというような表情で玉穂を見つめた。


 そして、前菜、主菜などを食べ終え、玉穂が待ちに待ったデザートの時間。玉穂はこの食事をきっかけに自分の仕事にもいい影響を得られないかと期待をしていた。

「玉穂ちゃんは甘味処で働いてるけど、何か新しいアイディアがあればいいなと思って、今回はさそったんだ」

 営業時間中も時間が空いていれば、来期の新メニューについて考えていた玉穂の姿を見ていた刑事さんが気遣ったのだと玉穂は感じ取った。

「また、刑事さんにお礼言わないと……」

 そして、デザートとして出てきたのはゼリー菓子だった。


 玉穂は来期の新メニューについて想像を膨らませた。

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