一章7
「と、いうことで! デートイベントもとい……『第一回城メン親睦会』を開催します!!」
海衣が高らかに謳い、
「城メン?」透が訊く。
「城のメンバー!」言ってから海衣は、「なんかかっこいい名前がほしいなあ」とつぶやき始める。海衣のネーミングセンスでは難しい。
「親睦会? 何するの」不知が尋ねると、
「ずっと城にいるのも気がめいるし、透もトレーニング続きで心が安まらないよね」
「そうでもない」「鍛錬が私の全て」
「え……ですよね! みなさんお疲れなので、一発お出かけしてデート……街中でショッピングやらご飯やら思いっきり楽しもうぜ! というわけ!」海衣は二人の否定をなかったことにすると、宣言して堂々と胸を張った。
「はあ、ボクはパスで」
「私も鍛錬が」
「ど、ど、ど、まってよお」海衣はしょげて、謎の声を発した。
「透さん、いってあげてくれない?」不知がめんどくさそうにいうと、
「仕方ない」小さく息をはいて、透は請け負った。
「不知ちも!」
「ごめん、外怖い」
「な」そういえば、買い出しの時など一度も不知は外へ出ようとしなかった。
「そこをなんとか! 絶対楽しいから」
「……ごめん、こればっかりはどうにも。変わらないと、駄目なんだろうけどね」
「あんまりせめないであげて」透も不知を擁護して、海衣は決まりが悪くなった。
「なら仕方ないか……」ただ透と二人で、というのも寂しい。どうにかならないかと海衣が考えていると、突如壁から黒い丸が浮き出る。
「私も行っていいですか?」
見計らったようなタイミングで壁から現れたレイだった。
「おー、もちろんいいよ!」
海衣は両手を掲げてレイを歓迎する。にぎやかなのはいいことだ。レイとは仲良くしたかったし。
「ありがとうございます。これから出掛けるんですか?」
「そのつもり。予定大丈夫だった?」
「幽霊なのでお気楽そのものですよ」
「そっか」
「私も、鍛錬はそのぶん夜にするから」
「うわお、ストイック」たまには休んでもいいのに、と心の中で呟く。透は疲れないのだろうか。
「それじゃ、ボクはいつものように閉じこもってるから」
「またねー、おみやげ買ってくるから」
「おかまいなく」
「絶対買うから!」
「……そう、ありがと」
不知はちらりと海衣を見ると、すぐに宣言通りに自室に閉じこもってしまった。
「じゃ、行きますか!」
「うん」
「行きましょう!」
こうして、海衣とレイと透の三人は城の境界を踏み越えた。
幻想少女は夜明けを見たくないって。 鳩芽すい @wavemikam
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