第2話
些細な事から恋は始まるものだ。
白拍子かおり35歳。大手宝飾卸白拍子商事の社長令嬢にして専務取締役。今まで幾度かは結婚の話はあったが独身。
お嬢様育ちだが、会社の専務を任されるだけの経営能力も教育されており、気も強く酒豪でもある。会社では常に気を配りピリピリしているが、社員には寛大でありたいと思っている。気を許してくつろげるのは親友の結衣の前だけだ。
声をかけてきたのは、亀田圭太25歳。茨木県出身。父親は小学校の教頭をしている家の次男。長男は教職についている。農業機器の会社の商品開発部に勤務。ごく普通の会社員だ。
二人は劇的なこともなく出会ったが、自然に惹かれあうようになった。圭太は今まで出会った男性たちのように生き馬の目を抜くような鋭いところもなく、むしろのほほんとしていて「この人大丈夫なの」と思ったりもするが、いつもマイペースでにこにこしている。酒も弱くて大抵酔いつぶれるのは圭太だ。かおりの愚痴もすべて聞いてくれる。白拍子商事のことも何も知らないようだ。
一方圭太にとって、かおりは頼れるお姉さんではなく、いつも不安を抱えて一人で頑張っている小鹿のように映ったらしい。可哀そうな小鹿ちゃん、僕が守ってあげなくちゃといつも思っている。ガラスの破片が飛び散ったり、地震があったりすると、「大丈夫、僕がいるから」といつもマイペースで意外と落ち着いている。
かおりは圭太といるときは最高に癒された。会社でストレスが溜まっている時も、苦しいことがあった時も、圭太の笑顔を見ると忘れられた。でも10歳も年下である。
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