少し嫌な夜

希空の隣になって1週間が経った。

色々友だちの前では文句を言っているが家では仲良く話している。

忘れ物をしても馬鹿にしなくなり、教科書を直ぐに見せてくれるようになった。

「そうだ誠也、今週の土曜日さ、初めての試合だね。」

そう、俺が入部して、スタメンになって初の試合だ。

緊張するとかではなく、ルールを覚えられるか分からない。

基本は優さんとチームメイトに教えてもらったが...

細かいルールはまだ覚えきれていない。

「希空、今日の放課後、細かいルール教えてくれるか?」

「良いよ。」

俺は一応ルールブックは買った。

だが、面倒で読んでいない。

「これどうするか...」

1500円で買ったが...分厚く読む気になれない。


放課後、家に帰り風呂に入った。

入浴中も「サッカー簡単説明動画」を観ていたが...

これ全て覚えさせるのは猿に英語を教えるようなものだ。

「...後で聞こう。」

説明動画を一応、観終え風呂を出た。

希空はリビングでアイスを食べていた。

冷凍庫を開けるとアイスはなにもない。

「アイスならないよ〜」

スマホをいじりながら返答した。

希空のアイスをじっと見ていると母が頭を叩いた。

「食事中の人をジロジロ見ない、優さんが買ってきてくれるから待ってなさい。」

そう言い母は夕飯の準備をし始めた。

「お母さん手伝うよ〜。」

アイスを食べ終えた希空も料理に参加した。

母は希空に甘い、夕飯前にアイスを食べさせる。

俺なら頭を叩かれアイスを取られる。

それが少し嫌だった。

実の息子と義理の娘、普通俺の方が優遇させる。

なのに...家は真逆だ。

いや、もしかしたらこれが普通なのかも...

悩んでいると優さんが帰ってきた。

「ただいま、アイス買ってきたよ。」

「おかえり〜」

希空はそう言いアイスを手に取った。

流石に母も止めた。

「希空ちゃん、2個目はだめよ。」

優しい母に言われ希空は捨て犬見たく落ち込んでいた。

「アイスは1日1本ね。」

母は希空の頭を撫でた。


夕飯はカツカレーだった。

まだカレーが残っている...

つまり、明日は確定でカレーだ。

しかも俺の苦手な辛口。

優さんも希空も母も皆普通に食べてる中俺だけ苦しんでいた。

水を飲みすぎて胃の半分が水だろう。

希空が部屋に来てサッカー勉強が始まった。


夜中まで猛勉強し、なんとか全ルールを覚えた。

この記憶が土曜まで保つか...

希空が自室に戻り寝た。

俺は寝る前にスマホが鳴ったことに気付いて確認した。

メールが来ていた。

【誠也君、久しぶり】

河合さんからだった。

中学卒業を気に引っ越し2年が経った今、なんのようだろう。

振った相手にメールなんて、常人じゃない。

俺は気付いてないふりをして寝ようと思った。

布団に入ると河合さんからまたメールだ。

【夜遅いし寝てるよね...】

俺は未読スルーも考えたが、返信してしまった。

【ごめん気付かなかった、起きてるよ。】

そう返すと直ぐ返信が来た。

【2年ぶりだね、引越し先でも元気かな?】

そう来たので【うん、元気だよ。】そう返し、寝るまで話した。

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