信仰を忘れた時代に問われる“祈りの意味”

 やまもとゆう様の『グラムエイジ』を拝読し、まるで世界の「終わり」と「始まり」の狭間に立っているような、静かで壮大な息づかいを感じました。
神々が忘れ去られ、祈りが力を失ったはずの世界に、再び神性が満ちていく――その再生の瞬間を目の当たりにするような感覚です。

 グルベール、エリーナ、そしてアイリ。
 それぞれが異なる立場で宿命に向き合い、理性と信仰、科学と奇跡のはざまで揺れながらも、自らの「人としての祈り」を模索していく姿に、胸の奥が静かに震えました。

 特にアイリの“名前”が明かされる場面は圧巻で、場の空気が一瞬で変わるその緊張感に、読者まで息を呑みます。滅びゆく神話が再び現実に姿を取り戻す時、私たちは何を信じ、どんな未来を選び取るのか――。

 壮麗で切なく、そしてどこまでも深い祈りの物語。

 ぜひあなたも、この壮大な叙事詩の世界に、足を踏み入れてみてください。

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