賢帝の御霊はこうして天高く上り、そこに遺されたのは……

 ハンナの弔辞が終わると出棺の運びとなる。

 棺から冷蔵魔法が付与された魔石が取り外された。そして、顔を見せるための小窓も閉められ、密閉するために釘が打たれる。

 棺は男手により神殿外の馬車まで運ばれ、その後ろを遺影を持ったハンナがついて歩く。

 大神殿の外の街道沿いにはたくさんの国民が詰めかけていた。そして、国民からは「ケント1世バンザーイ! リヴァストン帝国バンザーイ!」と万歳が捧げれられる。

 ケント1世を載せた馬車にハンナが乗り込むと馬車は大神殿近くの皇族専用の廟に隣接する火葬場に運ばれた。


 火葬場でも賛美歌が鳴り響き、いよいよケント1世の棺が焼かれる。焼かれるための台に棺が載せられ、焼くための魔導機械に棺が収まりきった瞬間、ハンナはやはり泣き崩れた。


「ケント! ケント! ああああああああああっ!」


 ハンナの慟哭どうこくが火葬場の中まで響き渡った。


 それからしばらくの後、骨になったケント1世。骨壷に粛々と入れられていくケント1世の骨。そして、その骨壷はハルト1世が持ち、建国帝タクト1世やその妻たちが眠る廟へと収められた。


 これにてリヴァストン帝国2代皇帝『賢帝』ケント・ワイズ・リヴァストン1世の国葬は完了と相成った。

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