012奴隷が着たい服

ここまでに『シロに着せたい服』は失敗に終わった。

家のクローゼットにピンクとブラウンのセーラー服が増えただけだった。

何かの時にはまた着てほしいが・・・


『シロが興味を持った服』も買ってみたが失敗だった。

それはメイド服。

着ればすごく可愛い。


元々天使のシロが、5倍増しくらいでかわいく見える。

シロの火傷も隠れてしまう。

ただ、一人で着れない服はどうなのか・・・


しかも、かわいくてフリルがたくさんついているので、実際の家事には向かないだろう。

火を使っていたら、ひらひらの袖に燃え移りそうだ。

『家事で火事』みたいなダジャレを思いついたが、これは言う必要があるのか?!


第一、 背中のチャックを閉める時や開けるときに、背中がごっそり見える。

もちろん、目をそらせばいいのだが、そらせるわけがない。

しっかり、下のパンツまで見てしまう。


そんなの毎日毎日毎日やっていたら、俺の精神力が持たない。


今日は思い切って、ノートパソコンで好きな服を探させているし、通販カタログも取り寄せたので、紙でパラパラやって探すこともできる。


これだけやれば、『シロが好きな服』も見つかるだろう。

ちょっとくらい高くても、またバイトを頑張ればいい。


最近では、Youtube用の動画用の漫画の絵の仕事が多くなった。

ストーリーも絵も簡単だからそんなに大変じゃないけれど、そこそこ枚数がある。

しかも、いつ無くなるか分からない仕事・・・

一時的なブームだろう。


でも、こちらもバイトだからいいか。


「シロ、何かいいのあったか?」


「・・・すいません。分かりません」


「そうか・・・」


シロはしょぼんとしてしまった。

喜ばそうと思って服を買おうと思ったのだけれど、逆にしょぼんとさせてしまった。


とりあえず、頭を撫でて慰める。


「うにゃ・・・」


『にゃあ』がでた。

人に前世というものがあるとしたら、シロはきっと猫だろう。

頭をなでると目を細めて気持ちよさそうだ。


この姿を見ていると、心の奥底から愛情がこみあげてくる。


「シロ・・・お前はTシャツ好きだな」


そう言えば、シロはいつも俺のTシャツを着ている。

好きなのだろうか。

身体を締め付けない感じがいいのだろうか。

それとも・・・


「はい、シャツはかみさまのにおいがします」


「待て待て、ちゃんと洗濯したものを渡しているぞ?」


「はい、きれいですが、こうして・・・鼻を当てると・・・」


シロは自分の肩の部分に鼻を当ててにおいをかぐ仕草をした。

ちょっと待て、俺って洗濯しても取れないにおいがあるのか!?


「やっぱりシャツはあんまりにおいがしないです・・・」


残念そうに言うシロ。


「かみさま、すいません」


そう断るとシロが胸に顔をうずめてきた。

なんだ、この状況は。


手は!?手はどうしたらいいんだ!?

両掌が宙を舞う俺。


(すー)「かみさのにおいです。シロの好きなにおい。安心するにおい・・・」


俺のにおいなんて臭いだけだろうと思ったけれど、好きと言ってくれるのならば悪い気はしない。

優しくしろを抱きしめて頭を撫でやった。



俺のにおい目当てでTシャツを選んでいたということは、俺がスエットを着る時期には、シロもスエットを着るのでは!?


そう思って、シロにスエットを渡してみた。

一番最初にしたことは、畳まれたスエットを自分の顔に押し当てて(すー、はー、すー、はー)している。

良いのかこれ、絵的に。


「かみさま、これ好きです。着たいです」


「そうか・・・好きに着てくれ。Tシャツより温かいから寒いと思ったら着るんだぞ?」


「はい、かみさま。ありがとうございます」


『シロ用の服』を買うつもりだったが、男女どちらでも着られる部屋着のような、パジャマのような、少しおしゃれな部屋着を数枚買った。


まさか、シロと共用で着ることになるとは・・・いつも想像の斜め上だ。


自分ではない他人。

だけど、一緒にいて全然嫌じゃない。

俺はずっとこの生活を守ろうと思った。

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