011奴隷のメイド服
他所(よそ)では奴隷だったかもしれないが、我が家では天使のシロ。
寒くなってきたので、服を買ってやりたいが、彼女なし、女友達なし、幼馴染なしの俺にとって女性の服は何を選べばいいのかまるで分らない。
例えば、○○ってブランドの服が欲しいと思えば、ネットショップは有能だ。
一覧が出てきて、近所の店よりも品ぞろえが多く、価格も安く、選択肢が多い。
でも、漠然と「女性用の服」と思って探すと無限にありすぎて何を選んでいいのかまるで分らない。
先日、手始めにピンクのセーラー服を買ってみたが大失敗。
シロに着せてみたらかわいすぎてずっと見てしまう。
しかも、丈もスカートも短くて、少し動くだけで下着がちらちら見える始末。
その下着も俺がネット通販で選んだものだが、シロが着ているというだけで違う意味が出てきてしまう。
目が離せなくなる。
そもそも『ピンク』はダメだろうと思った。
狙いすぎだ。
本当の制服にもありそうな『ブラウン』タイプも念のために買ってみたが、やっぱりかわいすぎてダメだった。
丈もスカートの長さもピンクと同じなので、色々ちらちら見える。
ダメだと分かっていても買ってしまうのが男の性。
これもクローゼットに仕舞った。
何か新しいものを考えないと・・・
このままではセーラー服の販売ページにある18色すべてがこのクローゼットにそろってしまう。
ピンクとブラウンで止めておかないと・・・
今回はちょっと真剣に、テーブルの椅子に座って、ノートPCを見ていく。
すぐ隣の椅子にシロが座って、画面をのぞき込んでいる。
身体がぴたりとくっついているのがすごく気になる。
何なら画面は全く見てない。
シロと接触している部分120%、画面-20%という配分だ。
「-20%」ってどういう状態だろう??
「かみさま、シロは神様のTシャツ好きですよ?」
「それだと・・・パンツ見放題になってしまう」
「シロはかみさまにパンツ見られてもいいですよ?」
横でシロがTシャツの裾をめくる。
「だから、それをやめろ!」
理性が保てなくなる・・・生活に支障をきたす・・・
「あっ!」
「わあ!びっくりした!」
「あ、すいません、かみさま。これはどうですか?かわいいです」
「え?どれ?」
シロが指さしたのは、メイド服。
しかも、ひらひらの付いたロリータっぽい服。
ベースは紺色だが、白いレースがふんだんに使われている。
袖は取り外し可能で、半袖にもなるらしい。
付けておけば長袖になり、シロの火傷も隠れてしまう。
例によってスカートは短めなので、前回の白いニーソを合わせれば足の火傷も隠れてしまう。
明らかに日常生活には向いていないが、これを着たシロが見てみたい。
価格は8000円くらい、送料を入れたら1万円程度。
「よし、これを買おう」
「わーい、やったー!かみさま、ありがとうございます」
シロが腕に抱き着いてきた。
ダメだ、かわいい。
とりあえず、頭を撫でてあげる。
「かみさま、シロ、この服を着てかみさまにお料理を作ります!」
なんか嫌なフラグが立った音も聞こえたが、慌てなければ問題ないはず。
一緒に作業すればいいだけだし。
***
2日後、メイド服が届いた。
まだ、荷物が届いたときのピンポンでシロの表情は固まるが、以前の様に部屋中わたわたすることは少なくなった。
以前はトラウマからか、大きな音は全然ダメだった。
誰かが家に来るピンポンにも大きな反応をしていたが、最近ではおいしい食べ物や、服など良いことがあると経験しているみたいで反応が少なくなってきたようだ。
『包みを開ける楽しさ』ってあるよな、と思ったので、シロに開けさせた。
しばらくがさがさやっていたが、俺はずっと静かに見守った。
ここで俺が他のことを始めたら、興味を失くしたと思ってシロががっかりするかもしれない。
「はい!」
箱を開けて中身を取り出したが、まだ袋に包装されていて、全貌は分からない。
今度ははさみを持ってきて、やっと開けた。
服と言いながら、割と色々ついてきた。
さすが送料込み1万円。
本体のメイド服、取り外し用の長袖、ブリム(メイドさんが頭に付けるアレ)、シャツ。
デザイン的に胸の部分がバックリ開いているのだが、ここは下にシャツを着るらしい。
しかも、リボンが別に付いている。
『追いリボン』だろうか。
元々のデザイン的に胸の部分に1つ付いているし、背中にはウエストを絞るためか、帯のようになっている部分があり、ここを結ぶので大きなリボンに様になっている。
これにさらに追いリボンってどこに!?
「かみさま、着ていいですか?」
「もちろん、これはシロの服だから好きに着て」
「はい」
シロが着がえる間後ろを向いておく。
部屋が1つしかないので、着替える場所などないのだ。
「かみさま、大変です」
「どうした、シロ」
「・・・」
「そっち向いても大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
振り向いてシロの方を見ると、例のシャツしか着ていない。
パンツは丸見えだ。
「全然大丈夫じゃないじゃないか!」
後ろを向く俺。
「かみさま、これ着方がわかりません」
「よくみてみろ、チャックとか付いているだろ?」
「んー、チャックは背中にあるんですが、どうやって中にはいったらいいか・・・」
「どういうこと!?服で中に入るとは!?」
これはダメだと思った俺は、なるべくシロを見ないように、メイド服を受け取る。
たしかに、背中にチャックがあって、がばっと広がる感じ。
そして中へ・・・そうか、そういうことか。
「シロ、これは、上から入ってもいいし、下から入ってもいいんだよ」
「ああ、そういうことですか」
シロが、上から足を入れスカートを持ち上げる。
右手、左手を袖に通して・・・ここでまた止まった。
「かみさま、背中のチャックが閉められません」
なるほど、背中の中央まで指が届いたとしても、チャックを持って上げて閉めるのは難しそうだ。
「よし、向こうを向いて見ろ。俺が閉めてやる」
「おねがいします」
シロの背中が丸見えだ。
シロの背中から視線を下に向けると、パンツも見えてしまっている。
これは男がやったらダメな作業だ。
ダメな作業だった。
動かない俺を変に思ったのか、シロが振り返る。
俺は何も言わずにチャックを閉める。
「ほい、これでいいよ」
「わーい!着れました」
「うーん、かわいい。メイド服いいな」
メイド喫茶には行ったことがないが、こんなメイドがいたらそれは通う。
ひと財産なくすほど通うだろう。
ただ、こんなかわいいメイドを目の前にして、手を出さないかと言われれば非常に疑問だ。
目の前で無邪気にくるくる回って見せるシロに俺は邪な感情しか抱いていない。
目の前には天使。
そして、俺の中には外道がいる。
「かみさま、似合いますか?」
「うん、すごく似合う。俺だけのメイドにしたい」
「はい、シロはかいさまだけのメイドです」
俺は掌を顔に当てた。
ダメだ、天使すぎる。
ひらひらがいいのか、フワフワしたデザインが心に響くのか、とにかく、そのままでかわいいシロが一層かわいく見える。
「かみさま、元気ないですか?はいっ!」
またスカートの裾をつまみ上げて、下着を俺に見せるシロ。
「それをオチに使うんじゃない!」
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