第39話 かがり火の大群
■
「兵の様子はどうだ?」
報告に来た兵士に、
「はっ! 候将軍の指示通り、陣の配置の変更は終わりました」
「うむ、では下がってよい」
「はっ!」
兵士は
「さて……では、この
そう独り言ち、
ふふふ……軍師殿は桃林関を攻略して大興へと進軍を続ける本隊にはせ参じるよう、陛下から指示が届き、今朝出立してここにはおらぬのだ。
そもそも、陛下はあの者を重用しておるが、
何より、たかだか二、三千の兵しかおらぬ武定城なぞ、二万の軍勢で一気に攻め立てれば簡単に落ちるのだ。
それを、何をまごまごしておるのか、牽制を仕掛ける程度で一向に攻めようともせぬ。
「まあ、
そうとも、
「ははははは! 笑いが止まらんわ! だが……」
そう……あの武定には、“白澤
なのにあの若造ときたら、本隊へと向かう直前に受けた引継ぎで、『決して“白澤
全く……自分が戦わぬからといって、気楽なことを言ってくれる……。
だが、先の寡兵での奇襲の際にはそのあまりの武に肝を冷やしたが、それでも数で押せばどうにかなることも分かった。対処は可能であろう。
まあ、いずれにせよそのような指示に従う道理もない。問われれば、勢い余って殺してしまったということにしてしまえばよいのだ。
「それはさておき……そういえばあの若造、去り際におかしなことをぬかしておったな……」
今朝、あの若造が呟いた言葉。
『ふふ……ここは
その時の若造の笑みは、
「まあいい……今はあの若造のことではなく、武定城よ。おい! 誰かおらぬか!」
俺は大声で呼びつけると、兵士が一人そそくさとやってきた。
「候様、お呼びでしょうか?」
「うむ……全ての部将と兵士に伝えよ! 明朝、武定城を一気に攻めると!」
「はっ!」
慌てて返事をした兵士は、幕舎を勢いよく飛び出していく。
「ふふふ……さあ、明日は忙しくなるぞ」
そう呟くと、
◇
――ジャーン! ジャーン! ジャーン!
「っ!? 何事か!?」
深夜に突然鳴り響いた
「しょ、将軍! 敵襲です!」
「敵襲、だと?」
だが……全く、いくら“白澤
「ならば兵を叩き起こして対処しろ。所詮は
「で、ですが! 敵の軍勢はその倍はおります!」
「何だと?」
兵士の言葉に顔を
「な、なんだこれは!?」
この陣へと迫りくるかがり火が、武定城から一直線に連なっている!?
「どういうことだ!? 連中は三千にも持たないのだぞ!? なのにどこからこれほどの兵力が!?」
だ、だが、このまま待ち構えているだけではやられてしまう!?
「ええい! 皆の者、急ぎあの連中に当たれ! こちらは二万、まともにぶつかれば破れることなどありはしないのだ!」
「「「「「うわあああああああああああ!?」」」」」
「っ!? 切り崩されたか……って、あ、あれは!?」
なんと、我が陣の最前列に飛び込んできたのは、武定の兵ではなく……牛、だとおっ!?
「こ、これはどういうことだ!? 何故、これほど大量の牛なんぞが!?」
よく見ると、ご丁寧に角に
「ええい! 落ち着け! 落ち着けえっ!」
牛の大群が二万の軍勢をいいように混乱に陥れる中。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!」
「「「「「っ!?」」」」」
牛の大群から
「者共! 敵兵が混乱している今こそ好機! 夜が明ける前に根絶やしにするのだ!」
「「「「「おおおおおおおおおおおーっ!」」」」」
“白澤
くっ……このままでは……っ!
「あっ!? 候将軍!?」
このままでは我が軍は総崩れになり、あの“白澤
「“白澤
本音を言えばすぐにでも退却したいところではあるが、二万の兵がたかだか三千にも満たない軍勢に敗れたとあっては、どのような
ならば……せめて“白澤
「行くぞおおおおおおおおおおっっっ!」
|儂は
――にい。
っ!?
「がはっ!?」
“白澤
そして、首のない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます