第496話 新人のデータ

 俺たちは宇宙最強のダークマター。他にもアンティキティラやルキゾーンなど、戦闘に特化した種族はいるが、結局は俺たちがナンバー1だと思う。


 現在向かっている未知の惑星ツァイド。その星の探索を任された仲間たちがなぜか帰還しない。通信も途絶え、安否不明という状況。そこで、執政機関のお偉方は最強機関マーテルクレストの人材をさらに送り込んだが、状況が好転することはなかった。


 そこでついに、最強中の最強ハーデス・ブレイドの俺たち7人が、200年ぶりに勢揃いで任務にあたるという最悪の事態になってしまったのだ。


 そんなに危険ならもっと大勢で行くべきだって? いいか? 俺たちひとりの実力は最強機関の人間20人分に相当する。ゆえに、これ以上の増員は単なる足手まといというわけだ。


 俺は経験豊富な先輩戦士ザドリックさんに、今回の不可解な騒動について見解を聞いてみた。


『ザドリックさん的にはツァイドでなにが起きてるんだと思います?』


『我らダークマターの戦士、しかも、マーテルクレストが30人も消えたとなると、人智を超えた事象やモンスターに襲われた可能性が高いかもしれん。いざとなれば、ワシの命を懸けて粉砕してやるから安心しとけ』


『人智を超えたなにか……ですか。てゆーか、命は大事にしてくださいよ』


 まじめな会話をしていた俺を嘲笑いながら、脳筋野郎が脳天気なことを言ってきた。


『がはは! 俺たち7人いりゃあマーテルクレスト150人分の戦力になる。余裕だって。それよりマギラバに聞きたいことがあるんだ』


『なんだ? ドレイクルス』


『噂で聞いたんだが、ザドリックさんの後任て、かわい子ちゃんなのか?』


『それそれ! 俺も気になってたんだ。マギラバ、データあるんだろ? 早く見せろって!』


 お調子者のデストロも食いついてきた。仕方がない。彼女のデータを見れば、このエロガッパどもも少しはおとなしくなるだろ。俺はギアポッドからアセスモニターを取り出した。


 ピコピコ ピッ! ピッ!


『ほら、この子だ』


 ふたりが鼻の下を伸ばして、彼女の映った画面を覗き込んだ。


『うおお! めちゃかわいいぞ♡』


『へえ、ミロッカちゃんねぇ。この子がハーデス・ブレイド入りを決めたのか。て、ちょ、おい! ドレイクルス! この子のデータをよく見ろ! おっそろしいぞ!』


『データ? ……マ、マジかよ!』


 ふたりは腰を抜かすほどに驚きながら、彼女の恐るべきデータにかじりついた。


暗黒界七覇器ダーク・ドミニオン・セブン5つ持ち……だと?』


『俺とデストロ、ゼクロ、ルナクレアは2つ、ベリリアとザドリックさんでも3つだぞ……し、信じられん!』


 暗黒界七覇器ダーク・ドミニオン・セブンとは、ダークマターの最大出力を用いて操ることができる特別な武器群のことだ。その数は7つあり、いくつの覇器を扱えるかによって、その者の強さが測られる。


 ハーデス・ブレイドに所属するためには、少なくとも1つの覇器は使いこなせなくてはならない。さらに、ずば抜けた身体能力も必須条件なのだが。


『攻撃力S、防御力S、俊敏性S、耐久力S、精密度S、回復力S、知覚力S、戦術力S、精神力S、隠密性S、協調性E? な、なんじゃこりゃ?』


『た、ただのかわいい顔した化け物じゃねぇか! おっかねぇよ!』


『そういうことだ。暗黒界七覇器ダーク・ドミニオン・セブン7つ持ちの俺についでナンバー2になるのが、このミロッカだ。せいぜいかわいがってもらえ。ふはははは!』


 ハーデス・ブレイドの先輩としてかっこつけたかったんだろうが、新人ミロッカのえげつない身体能力に、ふたりは意気消沈といった様子だった。


『ベリリアさん、すごい子が入ってくるんですねぇ。私、びっくりですぅ』


『ルナクレア、あなたも少しは特訓をしなさい。最近たるんでるわよ』


『えー!? お尻がですかぁ?』


『違う。生活態度よ』












 ゴオオオオオオオ……!!




 スーパー新人ミロッカのデータで一喜一憂している間に、俺たちを乗せた宇宙船は謎の惑星ツァイドに到着した。


 

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