第488話 ミロッカの行方
永遠のレディードールたちがついに始動。ネル・フィードたちが暮らすバドミールハイムの街は、僅か30分足らずでゾンビタウンへと変貌してしまった。
「ペッケさんが危ない! 早く戻りましょう!」
慌てるネル・フィードに反して、アイリッサは意外と冷静だった。
「あのおじいちゃんがゾンビごときにやられる気はまったくしないけど、一応、帰りましょうか」
『お姉たま、おじいたまって、そんなにお強いの?』
「強いっていうか、そもそも私の家って3メートルの塀に囲まれてて、その上に有刺鉄線も張り巡らされてるじゃない?」
『あ、そっかぁー!』
「仮にゾンビが家に入ってきても、銃火器は各種そろってるんじゃない?」
「そ、そう言われると大丈夫な気もしちゃいますけど……」
ドンドンドンドンドンドンッ!!
礼拝堂の大扉を乱暴に叩く音が響き渡る。それと同時に、外から無数のうめき声がする。ゾンビたちが人間の匂いに引き寄せられ、礼拝堂の周りに集まりだしたのだ。
「アイリッサさん、大丈夫ですか? 飛べますか?」
「大丈夫です!」
ネル・フィードたちは、セレンが割った大窓から浮かび上がり外に出た。見下ろすと、10体前後のゾンビが礼拝堂の周りをうろついていた。
3人はさらに上昇、街全体を見下ろした。数えきれないゾンビたちが、破壊行為を尽くす光景が目に飛び込んできた。
「信じられない。街の人たちが、あんな狂ったみたいに……」
「残念ながら、メルデスを倒せば元に戻るというわけでもなさそうですね」
「でもネルさん、エクソシストの力でゾンビになった人たちを元に戻せたりはしないんですか?」
「わ、私はそのへん、苦手なんです」
「あっ、見習いですもんね」
「え、ええ……」
アイリッサは長年暮らしてきた愛する街、バドミールハイムが無惨な姿にされた怒りを、天使の翼に乗せて、羽ばたかせた。
「はっきり言ってこの惨状はすでにディストピアじゃないですか。これよりも悲惨なことが、明日起きるっていうんですか?」
「セレンは朝のニュースでそれが報じられると言いましたが、どこでなにが起きるのか、見当もつきませんね」
『楽し……じゃなくて、なにが起きるんだろうね。私、怖いよ……』
3人は速度を上げ、ペッケの待つエーデルシュタイン家に向かった。
(あっぶな。楽しみーとか言いかけたわ。パウルちゃんが
気づいていた方もいたかも知れないが、ミロッカはアイリッサの石化解除の代金として、エルフリーナの意識に入り込んでいたのだ。
マギラバの意識の中では夢心地で寝ていたミロッカだが、エルフリーナの意識に関しては、完全に支配下に置き、乗っ取っていた。
(あの
まさに、やりたい放題。
現在最強の勢いのミロッカだが、彼女は後に後悔する。
ここ第3ミューバでの戦いに、軽々しく首を突っ込んでしまったことを。
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