第468話 汚れた世界の真実

 主人あるじの壮絶な過去。さらに、自分たちを生み出した悪魔の力を主人に与えたのがモライザ教教皇のカミロス2世だという衝撃の事実。


 永遠のレディードールのレイチェルとクラーラは、ざわつく心を落ち着かせ、努めて穏やかなリアクションを心がけた。


『メルデス様がポップキャンディーを愛する理由がよく分かりました』


『ビスキュートちゃんとの大事な思い出の味だったんですね……』


「私の核には常にビスキュートがいるのです。なので、あなたたち永遠のレディードールは私にとってかけがえのない存在なのですよ」


『お役にたてて嬉しいです♡』


『自分の冷たい体が誇らしいです♡』


 メルデス神父は悪魔の力を秘めた両手を愛おしい目で見つめる。


「ゾンビバレンス・エターナル。この能力を与えてくれたパウル様には感謝しかありません」


 そんな尊い主人をうっとり見つめるクラーラだったが、非常に気になったことを恐る恐る確認する。確認しない訳にはいかなかった。


『あの、その、悪魔の力をメルデス様に授けて下さったのが、あのカミロス2世って本当なんですか?』


 メルデス神父はニコリと微笑むと、クラーラとレイチェルの冷たい肩を抱き寄せ、ふたりの耳元に魅惑のイケボで囁いた。


「事はそう単純ではないのです。いいですか。全人類が驚愕する事実が隠されている。それがこのうす汚れた世界の真実と言っていいでしょう」


『あんっ♡』 『はぁんっ♡』


 永遠のレディードールの2人は小刻みに震えながら膝から崩れ落ちた。




 時刻はネル・フィードたちを迎え撃つ、9時になろうとしていた。


「では、気持ちいいことでもしながら愚かな彼らを待つとしましょう。それなりの戦いが待っています。2人の力で私のテンションを極限まで高めて下さい。お願いしますね」


『はい♡』 『はいっ♡』








 その頃、エーデルシュタイン家のネル・フィードとアイリッサ、エルフリーナの3人は、メルデス神父の待つ礼拝堂へ向かおうとしていた。


「ネル君、頼んだぞ」


 悪魔の力、闇の能力者、ディストピア創生。それらを天才ペッケの頭脳は驚くほど柔軟に受け入れた。


 あらゆる可能性を否定しない。常識というありきたりなフィルターを持ち合わせてもいない。好奇心と探究心と向上心の塊。それが天才、ペッケ・エーデルシュタインなのだ。


「大丈夫です。メルデス神父を悪魔の呪いから救い出してみせます!」


「人は見た目で判断できんとはよく言ったものじゃ。君が最強のエクソシストとはまったく思えんからのう」


「おじいちゃんは非科学的なことは信じないと思ってたけど、すんなり話を受け入れてくれたから驚いちゃった」


 そう言いながら意外そうな表情を見せるアイリッサに対し、ペッケは意味深な返事をした。


「一連の悪魔騒動、さほど非科学的な話でもなかろう。それよりなにか大事なことを忘れている気がするんじゃ。それがなにかが思い出せん。耄碌もうろくしたものじゃわい」


『ペッケおじいたま♡ また思いだしたら教えてね!』


「任せておけ。そうじゃ! 脱ぎたてのパンティーくれたら早く思い出せるかも知れんぞっ!」


『え? そうなの? じゃあ♡』


 スルスル


「こらこら、リーナ。脱がないの」


『え? あっ、はーい。えへへ♡』


「もう、本当にエロジジイなんだから。油断も隙もない」


「てへぺろじゃ!」





 ザッ 


「じゃあ、おじいちゃん、いってくるからね」


『バイバーイ♡ おじいたま♡』


「ペッケさん、いってきます!」


「3人とも無事に帰ってこいよ」


 最強エクソシストのネル・フィード。天使の力を持つ愛孫アイリッサ。久しぶりの股間のたかぶりを与えてくれたHな闇の能力者エルフリーナ。闇夜に消えていく3人の背中を、ペッケは神妙な面持ちで見送った。

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