第453話 興奮
その真っ白なベッドからは、白が本来もつべき清潔さや誠実さといったものを感じることはなかった。僕は初めて白が不潔だと思った。
ラファエルさんは掛け布団をめくると、ビスキュートをそっと寝かせた。静かに眠るビスキュートは、まるで本物のお人形さんのようだった。
「これを渡しておこう」
ラファエルさんがそう言って僕に手渡したのは、5センチ程度の小さなボトル状の容器。半透明で目盛りがついている。中で色のついていない液体が揺れていた。僕はすぐにそれが安楽死の薬だと理解した。
「これをビスキュートに?」
「Nゼノン71。5分で天国に行ける薬だ。マリアがずっと欲しがっていたものでね。起きたら、僕ちゃんからのプレゼントだと言って渡してくれて構わない。とびっきりの笑顔が見られるはずだ」
「ぼ、僕は……」
「多少時間がかかっても構わない。18時に私はここに戻って来る。それまでには浄化を済ませておいて欲しい」
「そ、そんな……」
ラファエルさんは机の上のサボテンの鉢を手に取ると、食人鬼に相応しい、重油のような真っ黒な瞳で僕を見て言った。
「ただし、18時までに浄化が行われていなかった場合、先に僕ちゃんを殺して食べるから覚悟しておくように」
「ええっ!?」
「僕ちゃんみたいなかわいい男の子のお肉も食べてみたいんだぁ。私もだが、ミネルヴァがとくにねぇ」
「ぼ、僕は死にたくありませんっ! そんなの嫌だっ!」
「なら、ちゃんとするべきことをしよう。それで僕ちゃんの命は助かる。約束しよう」
「助けて、た、助け……」
恐怖で震える僕は、床におでこをつけ、お願いしながら泣いた。
「5時間後、おたがい気分よく再会しよう。マリアの浄化、頼んだよ」
「はあ、はあ、あううっ!」
ラファエルさんは笑顔で軽く手を振り、ゆっくりとドアを閉めた。ガチャンと鍵をかける音がした。内側からは開けられない扉。ここへ来てしまったことへの後悔の波が、何度も打ち寄せては僕の
「な、なんでこんなことに……」
そもそも探偵きどりでビスキュートを尾行して、クレイジーな家に潜入したのは僕じゃないか。自業自得もいいとこだ。そうさ。ビスキュートのことを好きになった僕がいけないんだ。
好きになった僕が……僕が。
「ビスキュート……」
僕は涙を拭いて、寝息をたてるビスキュートをみた。長いまつげ、果実のような唇。僕はビスキュートの顔を30センチの距離で眺めていた。
「かわいい……」
僕の手は自然とビスキュートの白くて柔らかいほっぺに触れていた。しばらくするとその手は、なにかに引っ張られるように体の方へおりだした。
「はあ、ああっ」
小さく震える僕の手が、ビスキュートの首元からシャツの中を進んでいく。柔らかすぎる胸元。ドキドキしすぎて心臓が苦しい。息が乱れる。体が熱い。ペニスが大きくなりすぎて痛い。心臓の鼓動と一緒に体が上下左右に揺れる。
さっきまでの恐怖や不安、葛藤が、嘘みたいに消えていく。僕の意識はすべて、ビスキュートの体に触れる右手にドクドクと流れこんでいった。
指先にビスキュートの乳首が触れた。肌よりも柔らかくてしっとりした感触。僕はゆっくりと中指で乳首をなでた。平らだった乳首がぷっくりと膨らんだ。
こんなに興奮したのは生まれてはじめてだ。女の子の体をさわるって、こんなに気持ちがいいんだ。頭がおかしくなりそうだ。
「はあ、はあ、はあ」
僕は乱れる呼吸を整えることができず、ビスキュートの乳首をさわる手も大きく震え出した。
「きゃあ!」
最悪のタイミングでビスキュートが目を覚ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます