背徳の神父 メルデス編
第431話 ポップキャンディー
ジョボボボボ……
モライザ礼拝堂内のキッチン。メルデス神父は持参した愛用のバカラのグラスに自分の尿を注いでいた。
時刻は午後8時。決戦まで1時間。
愛玩ゾンビ『永遠のレディードール』のレイチェルとクラーラと共にネル・フィードを待ち受ける。
「これで準備は万端です。私の精神状態に異変を感じたら、すぐにこれを持ってきて下さいね」
『分かりました。メルデス様♡』
「お願いします」
メルデスはズボンを上げ、手を洗うと、テーブルの上のポップキャンディーの袋から、とくにお気に入りのメロン味を取りだして舐め始めた。
ぺろぺろぺろっ
「これが実においしいのです」
『メルデス様は本当にポップキャンディーが大好きなんですね。かわいい』
イケメン神父の意外な好物にレイチェルはメロメロだった。普段は動くことなく、冷たい死体としてメルデスの相手をする永遠のレディードール。
今日は特別な日ということで、動くこともでき、話すことも許可されている。
大好きな人のことを知りたい。
それはゾンビであったとしても乙女ならば誰でも思うこと。レイチェルは身分をわきまえながらも、
『メルデス様は、なんでそんなにポップキャンディーが好きなんですか?』
ぺろ……
メルデスのポップキャンディーを舐める舌の動きが止まる。
「レイチェル……気になりますか? 私がなぜ、ポップキャンディーを愛してやまないのか?」
『すみません、あの……は、はい♡』
それを聞いていたクラーラが、自慢げに会話に割って入った。
『私はメルデス様が落としたポップキャンディーを拾ったことがあるのよ!』
『えっ? そうなの?』
『私コンビニでバイトしててー、そこでメルデス様と出会ったの♡』
「そうでしたね。あのときのクラーラのポップキャンディーを拾う純粋無垢な手に、私は運命を感じました」
『えへへっ♡』
『むむっ! 私だってメルデス様のシャンプー担当してたんだからーっ!』
「レイチェル、ヤキモチですか?」
『す、すみません……』
「構いません。かわいいですよ。私は君たち全員を平等に愛していますから」
メルデスは舐めかけのポップキャンディーを、レイチェルのかわいいお口に差しこんだ。
カポッ
『んんっ……♡』
「私がポップキャンディーを愛してやまない理由でしたね……」
『は、はひ……♡』
「この話は君たち永遠のレディードールだからするのです。生きている人間に話すことは絶対にありません」
ガサリ
メルデスはいちご味のポップキャンディーを手に取り、話しはじめた。
「これは私が10歳にも満たないころの話なのです」
『はいっ♡』 『はひっ♡』
今、メルデスのかたく閉ざされていた過去の扉がひらく。2人の愛玩ゾンビのよろこびに満ちた瞳は、なぜか赤く輝いていた。
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