第430話 もぐもぐタイム

 闇の能力者たちとは異なる方法で悪魔の力を得たと思われるJudgment。


 そのひとり、エミリー・ルルーのスマホのロックを、アイリッサの祖父ペッケが持ち前のITリテラシーの高さで見事に解除。


 それにより、獲得できた組織の情報は以下のとおり。 


『カルト教団ネオブラの教祖のイメージはまるでゼロ。ただのワガママな子供にしか思えないセレン・ガブリエル』


『美を求める女性たちの自動的な自殺オートマティックスーサイドを考案、指示をした心なき悪魔、獅子ヶ辻空白』


 エミリーのスマホから得られた情報はごく僅かだったものの、0が1にはなった。アイリッサの弟レオンからは元・闇の能力者、小濱宗治が病院から姿を消したとの情報も手に入れる事ができた。


 ちなみにメルデス、エルリッヒとのメッセージのやり取りはなく、通話のみだった。それでもネル・フィードは戻った力と共に一定の満足感を得ていた。



 時刻は6時半。アイリッサがちゃちゃっと作ったサンドウィッチを、みんなで食べる事にした。


「軽くお腹に入れておかないと、戦えませんから。どうぞ」


「ありがとうございます」


『お姉たまの手料理だー♡』


「ただのサンドウィッチで大袈裟よ」


「それじゃあ、いただくとするかの」


 各々、様々な事を考えながらサンドウィッチを口に運ぶ。


「では、いただきます」

(メルデス、お前の犯した罪は許されるものではない。悪魔の力で君臨などさせはしない。人に戻って死ぬんだ)


 もぐもぐっ


(今の俺はエミリーより強いっ! メルデスには負けんっ!)


 もぐもぐっ


(奴と目が合った瞬間、先制攻撃で決める! なにもさせはしないっ!)


 ゴクンッ











『お姉たま、おいしーっ!』

(メルデス神父、自分をさらけ出してるようで、まるでさらけ出していない人だった……)


 もぐもぐっ


(死体が好きとか、臭いフェチとか、生きてる人間恐怖症とか、自分のおしっこ飲むとか、なんでそんな風になっちゃったの?)


 もぐもぐっ


(そのへん何も聞いてなかった。どうせ聞いても話してくれなかったと思うけど……)


 ゴクンッ










「おいしい? なら、よかった」

(海のように広く、深い心の持ち主。それがメルデス神父だった。まさか連続美女行方不明事件の犯人だったなんて。ハッキリ言って超ショック……)


 もぐもぐっ


(ひょっとして、私も超絶美女なわけだし狙われてたんじゃ? いやいやいや、なに言ってんの私……)


 もぐもぐっ


(度重なる神への背徳行為。他の闇の能力者と同じで、あなたの人生にも何かがあったんですか? メルデス神父!)


 ゴクンッ








「ふむ。うまいのぉ」

(スマホのロック解除できたら、ほっぺにチューしてくれるってリーナちゃん言っておったよなぁ? 完全に忘れてない?)


 もぐもぐっ


(あと、今夜は寿司をとってくれるって言ってたはずじゃ。これはどこからどう見てもサンドウィッチじゃ。うには? いくらは? 大トロは?)


 もぐもぐっ


(くそーっ! こうなったら今夜は久しぶりに美人OL嬉し恥ずかし残業性交パート2新入社員編で……♡)


 ゴクンッ




「あっ! おじいちゃんは食べ過ぎちゃダメだよ。お寿司とるから。本当にありがとうね」


「寿司? わ、忘れておったわい」

(なんじゃ、覚えておったのか。さすがワシのプリティな孫じゃ!)


『あっ! そうだ! おじいたまっ♡ ありがとね!』


 ブチュッ♡


「ふ、ふおおおっ♡ ほ、ほっぺにチュウか。わ、忘れておったわい!」

(リーナちゃんも覚えとったー♡)


『ほっぺにお口のバターが付いちゃったぁ♡ ごめんね。おじいたま♡』


「そ、そ、そゆのも嫌いじゃないから大丈夫じゃっ! ふんがーっ!」

(舌が届かんっ! な、舐めれんっ!)


 レロッ! レロレロッ!


『にゃははっ! おじいたま、変な顔してるー!』


「もうっ! エロジジイなんだから。我が祖父ながら情けない……」












 しばらくして届いたお寿司を堪能したペッケは、ネル・フィードの肩揉みで作業の疲れを癒してもらい、至福な時間を過ごした。


 時刻は8時30分。


 メルデスとの決戦の時が迫る。


「そろそろ時間じゃな」


「メルデスには何もさせるつもりはありません。一瞬で決着をつけてきます」


『ゼロさん、気をつけてね。メルデス神父は本当に謎すぎる人だから』


「さっきから自分でも驚くぐらいパワーが充実している。今までの自分が小さく思える程なんだ。アイリッサさんの事は頼んだよ、リーナ」


 ネル・フィードはエルフリーナの肩にそっと手を置いた。


『オッケー! お姉たまは全力で私が守るから、安心してね!』

(ゼロさん、かっこいいーっ♡)


「リーナ、ありがと。エンジェルパワーも負けないから。ぷひー!」

(余裕で肩とか触っちゃってさ。あーいやらしい。あーやだやだ)


「じゃあ、行くとしましょうか!」


 モライザ礼拝堂。


 そこで待つ闇の能力者アルバート・メルデスの真の能力に、ネル・フィードは驚き、戸惑う事になる。





エロジジイ再び ペッケ編 完

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