第424話 企みの影

 アイリッサはネル・フィードの要望に応え、一昨日、異空間『インフィニット・ステアケース』内で激闘を繰り広げた、小濱おはま宗治むねはるとのやり取りから確認を始める。


「こ、これ……嘘っ?」


 ネル・フィードとエルフリーナは、アイリッサと共に、スマホの画面に映るLINEの内容を見て、唖然とした。


「5月31日、私とネルさんが小濱ちゃんと会う、前の日のやりとり……」





〈 小濱宗治


5/31(日)


明日の夜、話があるわ。予定ないわよね? あけておいて

既読 22:56


了解っす! 16時までには絵を仕上げる予定なんで、その後ならいつでも

23:06


分かった。また連絡するわ

既読 23:19



「あの日の夜、小濱君はエミリーと会う予定だったのか。でも彼は……」


「ネルさんとの戦いで傷つき、救急車で運ばれた……」


『じゃあ連絡はつかないよね? 2人は会えなかった?』




6/1(月)


今から、あなたの家に向かう。いるわよね? OK?

18:25


寝てるの?

18:28


ちょっと!

18:28


まさか? 

18:29


狩られたわけじゃないわよね? 

18:29


まったく、しょうがない子ね

18:33


探しに行く。待ってなさい!

18:41



「そうでもなさそうよ。連絡が取れなくて探しに行ってるもん。あの人のことだから、きっと病院なんてすぐに特定して、直接会ったに決まってる……」


「そ、そうかも知れませんが、小濱君は全身大火傷で、意識も定かではなかったはず。そんな彼に会って一体何を……?」


 








「やけに賑やかじゃん」


 そう言って、突然 部屋に現れたのは、アイリッサの弟レオン。愛する姉を見つめる瞳は、いつもながらキラキラとサファイアのように美しく輝く。


「あんた、いたの?」


「いたっていいじゃんっ!」


「別にいいけど。挨拶してさっさと自分の部屋に戻りなさい」


「今さ、小濱宗治の話、してたよね?」


「ちょっと、レオン! 盗み聞きはよくないわよ」


「聞こえちゃったんだからしょうがないだろ。それより、小濱宗治について新たな情報があるんだけど。聞きたくない?」


 レオンの愛する姉を見つめる瞳の輝きに、エロ怪しい企みの影が差す。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「レオン……あんた」


 姉は敏感にそれを感じ取った。見返りになにを要求されるのか。唇か? 胸や尻か? まさかっ? 女の子の1番大切なモノなのか? 返事を躊躇ためらわざるを得なかった。



 グイッ!



「はじめましてっ! アイリッサさんと同じ職場で働くネル・フィードと申しますっ! 是非、その情報をお聞かせ願いたいのですがっ!」


 グイグイッ!


「だーっ! なんだこいつっ! 近いってーっ!」


 このダークマター男は、特になにも感じ取ってはいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る