第401話 やってんなっ!

 エルフリーナの肘から下は、見事に切り落とされた。にも関わらず、血は一滴も流れ落ちる気配はない。


『あ、あ、ああっ……!』


 エルフリーナが震えと共に、怯えた様な声を出す。それもそのはず、傷口の断面から徐々に、体が凍りつき始めたからだ。


 パキパキ パキパキキキッ!


氷の進撃フローズン・ブリッツを止める事は不可能。心臓までシャーベットになりなさいっ!」


 パキパキ パキパキキキッ!


『うわあ──────っ!!』


 勢いよくエルフリーナが凍りついていくっ! ネル・フィードは駆け寄ろうとするも、手立てが浮かばないっ!


 その時ッ!


 ブウウウゥンッ!!


「ネルさんっ! どいてっ!」


「は、はいっ!」


 アイリッサが、大きめの元気ボールを、エルフリーナに向けて思い切り投げつけたっ!


「エンジェル・エナジー・ショットーッ!!」


 ドーンッ!!


 元気ボールがネル・フィードの肩を掠め、エルフリーナに向かって一直線に飛んでいったッ!


「なにっ? その禍々しい光の玉はっ!?」


 バッ!    


   タンッ!


 エミリーは元気ボールを恐れて、逃げるように貯水槽に飛び乗った。


 ギュンッ! ボウッ!!


 元気ボールがエルフリーナに当たり、体に吸い込まれていくっ!


 ズキュキュ──────ンッ♡


 彼女の腕から全身を覆いつくそうとしていた氷の進撃フローズン・ブリッツが、あっという間に蒸発して消え去った。


 もちろん、エルフリーナの両腕は、何もなかったかの様に光速縫合され、元通りになっていた。


『お姉たま♡ ありがとっ!』


「大丈夫っ? きもくないっ?」


 悪魔の力 発動中のエルフリーナに、天使の力である元気ボール。


 彼女のピンチに何も考えず放ってしまったが、相反する力が混ざり合い、おかしな化学反応が起きないか、アイリッサは心配していた。


『うん、大丈夫っ! 元気っ!』 


「おっけー! ぷひっー!」


 エミリーはアイリッサの能力に目が飛び出る程に驚いていた。瀕死の状態のネル・フィードと、腕を切り落とし『氷の彫刻』一歩手前だったエルフリーナの2人が、あっという間に完全復活したからだ。

 

「なんなのよ、あの女はっ?」


 ネル・フィードとエルフリーナは、数秒のアイコンタクトで、エミリーを倒す算段をつけた。


「ゼロさん……!」


「了解だ。エルフリーナ……!」


 やはり、えっちをした……ではなく、死闘を繰り広げた2人だからこそ、なせる技である。


「ぷひぃー……」

(なんなのよ、あの阿吽の呼吸は。みつめあっただけで『了解だ。エルフリーナ』って。ありえなくないっ? やってんな、こいつらやってんなっ!)


 そのなせる技を、2人の後ろで激しく怪しむアイリッサであった。


 スタッ!


 貯水槽からエミリーが降りてきた。


「能力者狩り以外にも、厄介な女がいたものね。確実に研究対象だわ。パウル様へのに丁度いい」


「アイリッサさんに手は出させん!」


『ゼロさん、一気に決めよっ!』


 ネル・フィードとエルフリーナ。2人はエミリーを倒し、謎の人物、パウル・ヴァッサーマンの秘密に近づけるのか?

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