第390話 発砲
ヤヴァいお母さんが私の手首を掴んで外に連れて行こうとした、その時だった。
ピンポーン
嘘っ? 誰か来たっ! 助けてっ!
ヤヴァいお母さんがインターホンのモニターを確認した。
「ちっ、警察じゃないの」
警察? トンちゃんだ。トンちゃんが壊れる寸前に警察に連絡してくれてたんだ。トンちゃんグッジョブー♡
「そっか。ヴィトン13世ね。仕方ないわね。無視してたら突入してくる可能性もあるし」
ヤヴァいお母さんはそう言うと、私と手を繋いで玄関へ向かった。
「アイリッサ、何も言わないでちょうだいね。私はあなたを殺したくはないの。分かったわね?」
「う、うん……」
ガチャリ
玄関の扉を開けると、そこには3人の警官がいた。
「こちらはエーデルシュタインさんのお宅で間違いないですか?」
「ええ。そうです」
「こちらで未成年者の略取、及び殺人が行われる可能性があるとの通報を受けましてね」
警官の威圧的な口調に対し、ヤヴァいお母さんは顔色ひとつ変える事なくにこやかに対応した。
「イタズラじゃないんですか? 私は今から愛する娘と楽しいお買い物に出掛けるところだったんですよ」
「一応、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
「エヴァ・エーデルシュタインです」
「分かりました。では、身分を証明できる物の提示をお願いできますか?」
「はい。いいですよ」
この人はきっと用意周到。離婚する前の何かを使って身分証ぐらい偽造してる可能性がある。この場さえ乗り切れればそれでいいんだから。はっきり言って、ここで警察に帰られたら私の人生 完全に詰み。
そんなのは嫌だ。
私は勇気と共に声を絞り出した。
「た、助けて……」
「ん? なんだい? お嬢ちゃん」
私は大きな声でハッキリと言った。
「助けて下さいっ! 私はこの人と行きたくないんです! お、お父さんも殺されましたっ!」
「な、なんだってぇっ!?」
グサリッ!!
「ごあっ! 貴様なにをするッ!?」
ヤヴァいお母さんがテンメツマルをひとりの警官に突き刺したッ!!
「邪魔をするなーっ! 死ねーっ!」
パンパンッ!
それを見た他の警官が発砲。私の目の前でヤヴァいお母さんは太腿から血を吹き出して崩れ落ちた。
カチャ
テンメツマルも床に転がった。それを警官が拾い上げようと手を伸ばした瞬間っ!
バキーンッ!
シュンッ!!
テンメツマルが勝手に動き出し、お母さんのいるリビングの方へ飛んでいった。
「なんだあれはっ!?」
「行くぞッ!!」
刺された警官を除く、2人の警官が拳銃を構えながらテンメツマルを追って家の中へ入っていった。
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