第380話 はじめまして

 ブウウウウンッ!

 

 シャキイッ!


 エルフリーナの魔風の刃先がゼロに向けられる。それを見たゼロはダークマターを放出!


「はあっ!!」


 ギュアアッッ!! ブオッ!!


 その見た目がマギラバに変化。エルフリーナは一瞬たじろぐ!


『ゼ、ゼロさんっ? だ、誰!?』


 シュゴオオオッ!!


『これは俺の力。君がその気なら俺もこの姿にならざるを得ない!』


『それがエクソシスト? 全く聖なる力とは思えないんですけど。見た目もゼロさんのままがよかったしッ!』


『あの3人を凌駕する力! 見せてみろッ!』


 ギュアアッ!! ブァオッ!!


 マギラバはダークマターの剣を構えたッ! 


『あーそうッ!! ゼロさんもクズ男決定だね! 死んじゃえ──ッ!!』


 シャキンッ!


 ブアオッ!!




















 ポンッ!!


「きゃあっ!!」


 ドサッ!


『こ、これはっ!?』


 ふたりの体の大きさが元に戻った。それと同時にエルフリーナの変身も解けた。アンネマリーは立っていられず床に倒れ込んだ。


「なんで!? まだ時間は残ってるはずなのに! なんでよ? なんでよーっ!!」


 アンネマリーは床を叩きながら泣いていた。


 シュウウウウウッ!


 ゼロはダークマターを引っ込め、マギラバ化を解除。


「アンネマリー、服を着よう」


「なんで、私は、エルフリーナなのに……」


 アンネマリーはゼロに手伝ってもらい着衣を全て着終え、ソファーに腰掛けた。


「大丈夫かい?」


「…………うん」


 俯き、無表情なアンネマリー。エルフリーナだった時の明るさや無邪気さは嘘のようになくなってしまった。そんなアンネマリーにゼロは優しく語りかけた。


「はじめまして。私の名前はアークマーダー・ネル・フィード。29歳、独身だ」


「え?」


「好物はソーセージとお風呂。実は紅茶もクラシックも好きなんだ」


「そうなんだ……」


「マリーはなにが好きなんだい?」


「え?」


「好きなものだよ。ある?」


 アンネマリーは泣きながら言った。


「チーズケーキとコーヒーとウサビッチ。それと、やっぱりゼロさん」


「あはは。マリーにとって私は完全にゼロになってしまったな」


「そうだよ。アークマーダーなんちゃらじゃないもん」


「マリー、ウサビッチってなに?」


 アンネマリーはポシェットからスマホを取り出してYouTubeを再生した。


「はい、これ。これがプーチンで、こっちがキレネンコ」


 画面には、囚人服を着たウサギのキャラクターが所狭しと動き回るアニメが映っていた。


「なかなかシュールで面白いね。あははっ!」


「でしょっ? これ誰にも言ったことないんだ。ゼロさんが初めて」


 『はっ!!』


 『バキッ!』


 『どかーんっ!』


「おいおい、キレネンコ強すぎでしょっ!」


「そうなのーっ! あははっ!」


 マリーが笑った。ネル・フィードはそんな彼女を心の底から救いたいと思った。


 ガチャリッ!


 その時、ルーム19の扉が開いた。

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