第377話 26,000

 20時45分、私はバイパス沿いのローソンに到着。メルデス神父のお人形さん候補、クラーラの頭髪に紛れ込んだ。


「クラーラ、ちょっと待ってて! 私トイレ行ってくるわ!」


「はーい! 外で待ってるねえー」


 クラーラはバイト仲間の女の子がトイレに行ったのを見て、先に1人で外に出た。そして、裏の駐輪場でスマホをいじり始めた。


 私は人通りが途切れたのを確認して、クラーラを小さくした。


 パヒュンッ!


『クラーラさん。こんばんは♡』


「こんばんわー。あれ? えっ!? ここどこ? あなたは?」


『ここはさっきと同じコンビニの裏。私があなたの体を小さくしたの。だから景色が違って……』


「えーっ!? すごいっ! 魔法? ねー! ねー!」


『なに? あなた、怖くないの?』


「怖いと言うよりも不思議? 私、オカルトとか超常現象とか大好きなの。で、このあと私はどうなるの?」


『そうね、ファンタジーの世界に連れていってあげるよ♡』


「ファンタジー? すごーいっ! 超楽しみーっ! 早く行こうよーっ! わーい!」


 私、はっきり言って こういう子 苦手。生きてるだけで幸せ、みたいな? あんたは少し地獄を見た方がいい。go to hellッ!!



 ガバッ!


 ブチュウッ♡ レロレロッ!


「んんーっ! あっ……♡」


 













 ビシュンッ!!


『いい歳してガキよりも警戒心のない子だった。クラーラちゃん、メルデス神父がお待ちかねだからねッ!』


 私は無邪気なクラーラに無理矢理キスをして眠らせ、メルデス神父のお家に向かった。




















 コンコンッ!


お人形配達便ドールデリバリーサービスだよん♡』


 ガチャリ!


「エルフリーナ氏、中へ……」


 いつものように私達は永遠のレディードールが置かれた部屋へ入った。そして、クラーラを椅子に座らせるように置いた。


「エルフリーナ氏、ありがとうございます。間違いなくクラーラさんです」


『この子はメルデス神父の落としたポップキャンディを拾ってくれたのがキュンときたわけ?』


「ええ。僕ちゃんにとってポップキャンディは特別な物なのです。なので、それを拾ってくれたクラーラさんも特別なのです」


『そうなんだねー』


 メルデス神父は上半身 裸になり、クラーラの手を握った。


「この可愛い手で僕ちゃんのポップキャンディを拾ってくれたんです。ネイルもしていない、指輪もしていない、なんとも白くて柔らかい、無垢な手です」


『確かにその子、天真爛漫、純粋無垢な感じだったよ。子供みたい』


 メルデス神父は握っていたクラーラの手を広げて、人差し指を自分の乳首に押し当てた。


「ふおおおおっ♡ ああっ!」


 そして感じ始めた。


 メルデス神父、あんたの過去に何があったのかは聞かないよ。きっと私にもあったような地獄を生きてきたんだろうね。生きている人間が怖いって、相当な事がないと普通ならんでしょ?


『メルデス神父、私 帰るね』


 私が帰ろうとすると、メルデス神父は乳首にクラーラの指を当てたままキメ顔で私を見た。


「エルフリーナ氏、今度会うのは6月6日ですね。能力者狩り、いつどこで遭遇するか分かりません。お互い気をつけましょう」


『うん。私はやられんけどね!』


「エルフリーナ氏ならきっと大丈夫」


『あ、そうだ! メルデス神父、帰る前にひとつだけ……いいかなー?』


「なんですか?」



















 ピピピピピピピピピ……!


 ピコッ!



『26,000ッ!? すごっ!』


「なんなんですか? それは?」


『なんでもないよ。じゃあねー!』


 メルデス神父のエロ戦闘力、やっぱりパなかった。


 でも、この時の私は分かってなかった。このエロ戦闘力を上回る人間がいるという事をっ♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る