第374話 アンビバレンス

 メルデス神父が、ビアンカへの告白を終えた。と言っても、脇の臭いでファンになったとか、足の臭いで興奮したとか、くさかわいいとか、変態発言、連発後の『愛してます』なのよ。


 もちろん、それで喜ぶ女もいなくはないよ。でもビアンカが、そっち側の子じゃないってのは馬鹿でも分かる。メルデス神父、あんたってマジで軸ぶれないよね。そゆとこ嫌いじゃない。今度エロ戦闘力、測らせてね。


 すっ


 メルデス神父が、ビアンカの頭の上に手を置いた。ついに能力を発動させるんだね? 一体どんな能力?


「エルフリーナ氏」


『はいな』


「僕ちゃんは今、ビアンカさんの事をとても愛しているのと同時に、殺したいぐらいに嫌ってもいるのです」


「ひっ! 助けてえっ!」


 そんなん言うたらビアンカ怯えるに決まってんじゃん。にしても、愛しているのに殺したいぐらい嫌い?


『んー? なにそれ?』


「僕ちゃんの中に、ビアンカさんに対する相反する感情が、混在しているという事です」


『相反する? 好きと嫌いって事?』


「簡単に言えばそういう事です」


『で? それがどうしたの?』


「僕ちゃんは、ビアンカさんの脇や足の臭いが大好きですが、先程の告白の最中、僕ちゃんの事をキモいと言ったり、泣いて帰りたがったビアンカさんの事は、はっきり言って嫌いなのです」


『ふーん。だってさ、ビアンカちゃん! あっはははっ!』


「私、どうすればいいのお……?」


 ビアンカが、恐怖で震えているのがよく分かる。でも、それを無視してメルデス神父は話し続ける。


「僕ちゃんの今の心理状態をというのです」


『アンビバレンス? 聞いた事はあるけど、そういう意味なんだ』


「僕ちゃんが、今から使う能力を発動するには、このアンビバレンスが必要条件なのです」


『そうなの? なんか面倒くさっ!』


 ガシッ!


「ひいっ!」


 メルデス神父は、優しく乗せていた手を大きく広げ、ビアンカの頭を掴んだッ! 


「ゾンビバレンス・エターナルッ!」


 ズオオオオオオンッ!!


「あぎゃあ───────ッ!!」


 ビアンカが、白目を剥いて痙攣ッ!信じられないほど不気味な悲鳴を上げた。ちょっ! 外に聞こえない? ヤバない?


 ビアンカは、泡を吹いて完全に動かなくなった。


『メルデス神父。終わった? その子、死んだわけ?』


 メルデス神父は、ビアンカの頭を優しく撫でながら私を見た。


「ええ、死んでいます。ですが、私の命令で動きもします」


『ちょっ、え? まさかっ!? それって……』


「ビアンカさんは今、『ゾンビ』になったのです」


『ゾンビ─────ッ!?』


 メルデス神父の能力は、好きな女の子をゾンビにする能力だった。でも好きだけど嫌いじゃないとダメとか……アンビバレンス? だるっ!


 しかも『ゾンビバレンス』て。完全にダジャレやんっ! 他にも能力あるんだよねっ? ありますよねっ? メルデス神父っ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る