第373話 変態の告白

 プッチーベーカリーの看板娘、ビアンカが目を覚ました。たぶんこの後、メルデス神父に、体中の恥ずかしい臭いを嗅ぎ倒される運命なんだろう。


 でも、あんたはお人形さんになるんだ。だから、恥ずかしいなんて感情もなくなる。メルデス神父は生きてない女の子をご所望しょもうなんだ。


「う、う〜ん……ここどこ? 何が起きたんだっけ?」


「お目覚めですか? ビアンカさん」


「あっ、お客さん! 私、どうしてっ……?」


 私は、ビアンカの肩に手を置いた。


『あなたは見事、このメルデス神父のお人形さん候補に選ばれたの。とても光栄な事なのよ♡』


「あ、あなたっ! 思い出したっ! トイレで小さくされてっ! キスされて……!」


「エルフリーナ氏、ビアンカさんとキスしたんですか?」


 メルデス神父の顔が、少しだけ引き攣っているように見えた。私はなんかムカついたから、すぐに言い返してやった。


『仕方ないじゃん! 気を失わせる為だったんだからっ! 文句ある?』


「……大丈夫です。特に問題はありません。ありがとうございます」


 そんな私たちのやり取りを聞いていたビアンカが、怒って立ち上がった。


 ガタンッ!


「問題、大ありですよっ! これって誘拐とか監禁って事ですよっ! 私、帰りたいんですけどっ!」


 まあ、こうなるよね。


 どうすんの? メルデス神父。私はもう何もしないよ。連れてくるまでが私の仕事なんだし。


 そう思っていたのも束の間、再びメルデス神父が、真剣な表情でビアンカの前にひざまづいた。


「ビアンカさん、申し訳ありません。私はあなたのを嗅いでからというもの、あなたの大ファンになってしまったのです」


「な、なにそれっ? 私の脇の臭い? やだ、キモい……怖い」


 ビアンカは涙目になっている。そりゃそうだよ。そんな変態な告白されたらさー。メルデス神父、火に油注いでどうすんの? 闇の能力でどうにかするわけ? するんだよね?


「先程、あなたの足の臭いも嗅がせてもらいました。ほら、靴 脱げてますよね? とても臭くて興奮しました」


「助けて……もういやっ!」


 ビアンカは、椅子に座って顔を手で覆い、本格的に泣き始めた。顔見知りの客に、仕事終わりの汗臭い足のを嗅がれる。そんな屈辱的な事はないもんねッ! た、楽しいっ! ここに来て大正解ッ!


「ビアンカさん、泣かないで下さい。あなたは可愛い。のですから」


 出たよ、臭かわ。それ本人に言う? 絶対嬉しくないし。喜ぶとでも思ってんの?


「帰りたいよぉ……ぐすん」


「ビアンカさん。愛しています」


 一向に泣き止まないビアンカを見て、メルデス神父が、ついに能力を発動する素振りを見せた。おおおっ♡

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