第369話 私の恐怖症

 叔母は売春斡旋ばいしゅんあっせんの容疑で逮捕された。身寄りのない私は児童相談所に行く事を勧められたが断った。


 そんなダルイとこ行きたくねーっての。トイレやお風呂、その時はエルフリーナに変身すればなんの問題もない。メルデス神父からいつ呼び出しが来るか分からないし、いつでも自由に動ける状態でいたい。


 1週間後に行われた卒業式。私は出席しなかった。んなもんどうでもいい。高校に行く必要もない。すぐにディストピア創生の時が訪れるのだから無意味 極まりない。


 エルフリーナとして今やるべき事をやる。長年 溜め込んできた やりたくてもやれなかった事。クズ男とクソ女の排除。私を愛で満たしてくれるスーパーダーリンを見つける事。あと、おまけでメルデス神父のお手伝いもね。


 まずはエロい男をおびき寄せる作業から始める。その中にスーパーダーリンが現れる可能性もなくはない。


 クズ野郎はティッシュに丸めて捨てる。6月6日が迫ってきたら、徐々にちんこのない死体をベッドに残して悪魔の存在を知らしめていく。


 そして、イケメンどもにはエチエチをばら撒かせるという任務を与える。クソ女に飲ませてSEXに狂わせろ!


 お前らクソ女は男のにされているだけ。そこに愛はない。それに気づかず愛されているなどと勘違いしている馬鹿はエチエチで地獄に堕ちればいい。堕ちるべきッ!


 愛はエルフリーナだけが独占できる特別なもの。私とスーパーダーリンが結ばれて初めて生まれる。それが愛。


 死にたくなければ一般人はSEXをするな。Do you understand?



 私は『満場エッチ』というクソアプリをインストール。5歳まで使っていた父の姓『ヴァルギナ』で登録した。


「クズ男ども。お前らに最高のを味わわせてあげるよ」


 噂通りのヤリモク必須のクソアプリ。ヴァルギナへのメッセージはひっきりなしに来た。


 実はそのやりとりの中で、私もある恐怖症に心をむしばまれているという事に気がついた。メルデス神父の話を聞いていた時は、自分に恐怖症があるなんて思ってなかったから驚いた。


 私は夜が怖い。


 夜に男と会うのが怖い。外に出られない。脳が、体が、拒否反応を示す。


「これが恐怖症か……なるほどね」


 それはエルフリーナに変身しても変わらない症状だった。ただ、コンビニなんかに買い物に行くのは平気で、『男とやりに行く』と考えると暗闇に飲み込まれる感覚に襲われた。


 メルデス神父が言っていたように、恐怖症ってのは難解で厄介だ。なので私がエルフリーナとして活動するのは昼間に限られた。真っ昼間でも性欲を満たそうとするクズは腐るほどいた。


 今日もラブホである男と合流。


「おお♡ 可愛いじゃないか! 君がエルフリーナか?」


『そうだよっ♡』


「じゃあ早く脱いでシャワー浴びて来いッ! そしてこれに着替えろッ!」


 その男が手にしていたのは、現在 教育現場ではその見た目のエロさから使用されなくなった女子の体操着、伝説のブルマだった。

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