第368話 その神父、不敬虔につき

 メルデス神父は『生きている人間恐怖症』という、奇怪きっかいな症状に悩める子羊だった。


 でもおんなきて。なんか同情しきれんのは私だけか? でも本人の言うように、それはかなり厄介だと思った。


 そうそう。前回のラストで言ったように、メルデス神父は私にあるお願いをしてきたんだよね。そんじゃあ続きいってみよー!





「エルフリーナ氏、君を見込んでお願いがあるんです。聞いてくれますか?」


『闇の能力者仲間じゃん! 聞くよ、言ってみ! あははっ!』


 メルデス神父は私に遠慮する事なく、躊躇ちゅうちょする事もなく、願いを淡々と語り始めた。


「君の能力の力を借りたいんですよ」


『私の能力? あに?』


「あの、小さくなる能力です」


『あー、いいけど。なにすんの?』


「僕ちゃんのお人形さんを作るには、もってこいの能力だと思ったんです」


『あ、あー……お人形さんね』


「僕ちゃんは意外に有名人なので、街を歩けばそれなりの視線が注がれてしまうのです。僕ちゃんは目立つ事が本当は好きではありません」


『モライザ教のイケメン神父。広報活動もしてるよね? そりゃあ目立つよね』


「お陰で女の子に不自由した事はないのですが、もう僕ちゃんは耐えられないんですよ。死んだ動かない女の子の方がいいに決まってますから」


『でもさー、そんなん腐っちゃうし、後処理 大変じゃん! 6月6日過ぎればさ、めちゃくちゃできるんだし。も少し待てば?』


「そう思っていましたが、エルフリーナ氏の能力を見たら我慢ができなくなったんです。僕ちゃんの能力を遺憾なく発揮できると、心が震えてしまいましてね」


『え? ちなみにさ、メルデス神父の能力ってどんなんなの?』


「まだ言えないのです」


『あー、はいはい。作者に忖度ね!』




 ありがとう。メルデスちゃん。


 by えくれあ♡










 



『私は何をすればいいの?』


 メルデス神父のお人形さん計画。その全容が明らかになった。


「エルフリーナ氏には、僕ちゃんの気に入った女の子を小さくして僕ちゃんのおうちに連れてきて欲しいんですよ」


『メルデス神父の家に?』


「そうです。できれば気を失わせた状態でお願いします」


『分かったよ。それだけでいいの?』


「十分です。お人形さん専用の部屋を用意しておきます。そこで元の大きさに戻してくれれば、後は僕ちゃんがにします」


『素敵ねー。モライザ教のイケメン神父様もなかなかの変態だったわけだ。でも、嫌いじゃないよ』


「そうですか? 嬉しいです」


『だって お人形さんは子供なんて産めないもんね? それにメルデス神父はそのお人形さんをとことん愛そうとしてるわけでしょ?』


「もちろんです。僕ちゃんのありったけの愛を注ぐつもりです」


『ふふ。女の死体が好きとか、死体に愛を注ぐとか、不敬虔ふけいけんにも程があるんじゃない? 神父様』


「この秘密は誰にも知られたくはありません。エルフリーナ氏を仲間として信頼しているからこそ お願いしているのです。あくまで私は敬虔なる神父、アルバート・メルデスですよ」


『まっ、そういう事にしときましょ』


 私は自宅の側まで送り届けてもらい、車を降りた。


『メルデス神父、ありがとね♡』


「いいえ。ではまた連絡しますので」


『はいはい。お待ちしてますよ。お人形さん計画ね!』


 メルデス神父は車椅子をトランクから降ろすと颯爽と去っていった。私は物陰で車椅子に座り変身を解き、元のブスの障がい者に戻った。


「帰って一眠りしよ。なんか疲れたわ……」


 別に学校を休んでも文句なんて言う叔母ではない。今となっては私の心をぶっ壊してくれた事に感謝してる。


 そんな叔母だったが、2日後に逮捕された。私の新たな門出を祝う様な出来事だった。

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