第364話 私の求めるもの
私はここに来た目的についてはもちろん何も言わず、メルデス神父に助けを求めた。しかし、神父は間髪入れず私に言った。
「君は我々の仲間に加わる選ばれた人間。そういう事ですね?」
「えっ!?」
「ハンス・エルリッヒ。彼に会ったという事で間違いないですか?」
「は、はい。そうですけど……」
お、驚いた。このメルデス神父は既に悪魔の力を持った闇の能力者だということっ? 信じられない、まさかモライザ教の神父が、神に仕えるものが、悪魔に魂を売るなんて、寝返るなんて。
ちなみに私はモライザ信徒ではあったものの、とっくに信仰心などというものは捨てていた。
「ふむ。エルリッヒ氏が選んだのなら間違いないですね。さっ、中へ入りましょう」
「あっ、ありがとうございます」
メルデス神父は見た目に受ける印象とは違ってめちゃくちゃ力持ちだった。車椅子のタイヤに手をかけると、ヒョイと持ち上げ階段を登っていった。
「君、名前は?」
「アンネマリー・クロイツァーです」
「ふむ。なかなかエロい名前ですね」
「…………ん? エロい?」
ガチャン
「よし。着きました」
「ありです」
メルデス神父は階段を登り切り、私の乗った車椅子を優しく最上段の踊り場に置いた。そして教会の扉をゆっくりと開けた。
ギイイイイッ!
「ではアンネマリー氏、行きますよ」
「よろです」
メルデス神父は車椅子を押し、教会の奥へと進んでいく。すると1人の人物が祭壇に立っていた。
「メルデス、その子は?」
「はい。エルリッヒ氏が選んだ悪魔の力の適合者です。パウル様」
『パウル』
そう呼ばれた人物は赤のスカプラリオで身を包み、胸には逆五芒星のネックレスが輝いていた。
どうみてもジジイだ。歳は70歳ぐらい。このジジイが私に悪魔の力を授けてくれるってわけか。
「だいぶ若いな。そなた名は? 歳はいくつだね?」
「アンネマリー。ピチピチの15歳」
「なるほど。悪魔の力を心の底から欲しているのじゃな?」
「うーん、欲しいっちゃ欲しい。だって、生まれ変われて、命も永遠になるっていうし。違うの?」
「はははっ! そうだな、生まれ変われるぞ! ちなみにそなたの求めるものはなんだね?」
「求めるもの?」
ジジイは終始笑顔なんだけど、その中にもちゃんと恐ろしさに似た迫力のようなものがあった。
でも、私に怖いものはない。この若さで死ぬのだけは嫌だけど、地獄ならいくらでも見てきた。
「求めるもの、手にしたいもの、自分本来の生き方、あるのなら言ってみよ。アンネマリー」
私は言った。それしかなかった。
「……SEX」
「ん? なんと?」
ジジイに私の気持ちが分かるかな?
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