第340話 コットンラビッツ
「アイリッサさん、あそこです……」
「あそこにエルフリーナが来るんですね。絶対に許さないんだからっ!」
ネットカフェ『コットンラビッツ』
ディーツ国内だけでも50店舗を誇る人気のネットカフェ……とかではなく、1年ほど前にここアーキヴァハラに出来た割と新しめのネットカフェ。
店舗数は国内でも3軒ほど。しかし、会員登録などが不要な為、本来の目的とは違う目的で使用する人種には非常にお手軽かつリーズナブルで大助かりなネカフェなのだ。
「アイリッサさん、お願いです。別の部屋で待機していて下さい」
「えー、やだ……」
「実はさっき、エルフリーナが私に接触してきたんです」
「接触っ?」
「はい。耳元で『遅刻するな』と、囁かれました」
「ど、どんな女だったんですかっ!?」
「姿は見えません。しかも、警戒していたにも関わらず、私はエルフリーナの接近に気づくことができませんでした……」
「ネルさんがっ!? 気づけないって、エクソシストの力を持ってしても?」
「そういう事です。なので今も警戒は解いていません。すぐそばにいる可能性もあるんです……!」
「ぷひゃあ。あっ! でもでも今、悪魔の臭いはしてませんよ!」
ネル・フィードはアイリッサのそれを聞いても気を緩める事はなかった。
「エルフリーナはそれすら隠せる可能性があるんです。今までの3人とは何かが違う。そう思えてならないんですよ」
そう言いながら警戒を強めるネル・フィードだったが、アイリッサは意に介さない。
「ネルさん。私は天使の光の能力者。だから分かるんです」
「なにがですか?」
「悪魔に私を殺す事はできない! って事がです」
「そうなんですか?」
「はい。ホラーバッハ君と空中で対峙した時、それを強く感じました」
「あの時?」
「はい。ダメージは受けるのかも知れないですけど、死ぬ事はないって」
「アイリッサさん……」
「だから一緒に行かせて下さい!」
「しょうがないですね。天使の力、とてつもなく期待していますよ!」
2人は覚悟を決め、大して可愛くない黄色いウサギが目印のネットカフェ『コットンラビッツ』の入り口へ。
ウイン!
店内へ入るとすぐ目の前に受付のカウンターがあり、黄色のユニホームを着た店員の男が1人いた。もちろん、胸元には大して可愛くないウサギのコットンちゃんのイラストがプリントされている。
「いらっしゃーせ……」
猫背気味の出っ歯の男。2人を見る目はなんともいやらしいものだった。
「あのぉ……」
ネル・フィードが話しかけようとしたと同時に、その店員の男の方から声をかけてきた。
「ヒヒヒ。身分証明書の提示を、お願い致します……」
「え、えーと……」
「ヒヒヒ。お客さん。そっちのお客さんですか?」
「え?」
「お客さんたち、別にネットを利用しに来たわけじゃあ、ないんでしょ?」
「え?」
「もう自分ここ長いんで分かるんですよ。身分証明書もいりません。なのでお部屋はビデオルームになります。それでよろしいですよね?」
「はい。それでお願いします」
「お2人で3時間、2,900ルーロです。ヒヒヒ……」
「あ、はい、じゃあ……これで」
ネル・フィードは3,000ルーロを店員に手渡した。
ピッ、ピピッ! ウィーン……
ビリッ!
店員はレジを操作し、釣りを渡すと部屋番号の札を差し出した。
「どうぞ、ごゆっくり。ヒヒヒ」
部屋番号『19』
「行きますよ! アイリッサさん」
「はい! ぷひー……」
残ネル史上最エロの幕が上がる。
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