第334話 薔薇従事団
ネル・フィードとアイリッサは首都ルベリンの上空に到着。アーキヴァハラの雑居ビルの屋上に素早く着地した。
スタッ!
スタッ!
「11時ジャスト! 着きましたね!」
「はい。エルフリーナとの約束の時間までは2時間あります。さっきアイリッサさんが言っていたメイドカフェへ急いでいきましょう!」
「ネルさん、違うんですけど」
「な、何がですか?」
「さっきネルさんは私の話を遮って勝手にメイドカフェって決めつけてたみたいだけど……私が行きたいのはそうじゃないの。私が行きたいのは……」
「い、行きたいのは?」
「男装カフェ! 男装カフェに行きたいんですーっ!」
「……え? 男装?」
「そうです! アーキヴァハラにある人気の男装カフェ『
「ちょっと何を言ってるかよく分からないな……」
そう言ってポカーンとするネル・フィードにアイリッサは懇切丁寧に薔薇従事団について語り出した。
「男装カフェっていうのは、女性が男の人の格好してめっちゃ優しく接してくれるとこなんですっ!」
「女が男の格好を?」
(なぜそんな事をする必要があるんだっ!? もったいない!)
「はいっ! 本物の男の人より綺麗だし、かっこいいし、優しいし……1回行くとハマっちゃう女子続出らしいんですよ!」
満面の笑顔のアイリッサを見て、ネル・フィードはボソリと言った。
「アイリッサさん……カーター君はどこに行っちゃったんですか?」
「ぷっ! ぷひっ! そ、それはそれですよ! 悲しんでばかりはいられないっ! それが生きるという事なんですから!」
「なるほど、確かに」
「わ、私の悲しみを埋めてもらいに薔薇従事団に行くわけですっ!」
「分かりましたよ。では、その綺麗で優しくてカッコいい、男の格好をした女のいる店にいきましょう!」
「その言い方……『薔薇従事団』って言って下さいよ! ネルさんだってハマるかもよ?」
「ないです。ありえません。そういったものに私は一切ハマりせんよ!」
(なにがメイドだ、なにが男装だ、くだらない。俺は君がいればそれでいい。なんちゃって!)
ネル・フィードは雑居ビルの屋上の鍵をダークマターでなんなく開けた。そして2人は階段で下へと降りて行った。
その途中だった。
「あー♡ ご主人様、お嬢様、おかえりなさいませー♡ お待ちしてましたー♡」
ちょうどメイドカフェのある階にさしかかったところでメイドさんの格好をした女の子に捕まってしまった。
「急いでますので。すみません」
ネル・フィードがそう言って足早に立ち去ろうとしたにも関わらず……。
「ネルさーん! ちょっとだけ寄っていきましょうよー!」
アイリッサはメイドカフェも満喫する気満々だった。
「えっ? えー? 薔薇従事団に行くんじゃ? じ、時間が……」
エルフリーナとの約束の時間まで残り1時間52分。
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