第332話 奥歯をガタガタ言わせ節

 防犯カメラには、突然首が吹っ飛ぶ3人の私服警察官の姿が映っていたのだという。ネル・フィードは『防犯カメラ』と聞いてひとつ気になる事があった。


「ハイドライドさん。ちなみにエルフリーナの入店時の姿はカメラに映ってなかったのですか? 素朴な疑問なのですが……」


『それ、気になりますよね?』


「は、はい!」

(一体どんな人物が映っていたんだ?)


 しかし、そんなネル・フィードの期待は一瞬で打ち砕かれる。


『兄貴、それがですね、エルフリーナと思わしき人物が入店する姿は、一切映っていなかったんですよ!』


「そ、そうなんですか? そんな事がありえるんですかっ?」


『俺も聞いた時はと思ったっすけど、よくよく考えたらそうでもないと思ったっす』


「と、言いますと?」


『いいすか兄貴、エルフリーナっつー女は、店員に気づかれねぇ様に店に入って、そして行ってるって事っすよ!』


「そ、そうか! エルフリーナは客としてネカフェには入っていないという事……ほ、本当に透明人間なのか?」


『エルフリーナの能力は得体が知れねぇっすけど、その可能性はかなり高いっすね!』


「こ、困りましたね……」


『でもエルフリーナと会ったら絶対に死ぬってわけじゃないっすからね!』


「た、確かに! エチエチを手にして帰ってきた人間も今までに何人かいたわけですからね!」


『その通りっす! ですが、エチエチを使用して死ぬ確率は100パー……』


「なぜそんな危険な物を手に入れ、使う必要があるんでしょうか。理解に苦しみますよ」


『兄貴、エチエチは1回使っただけで死ぬって事はないらしいっすよ。ただ2回、3回と我慢できずに使っちまう。その先に待つのが死であったとしても。そのぐらい気持ちいいらしいんすよ』


「闇ドラッグ『エチエチ』を作り出す、そして透明人間になる。今、エルフリーナについて分かるのはそのぐらいですか……」


『兄貴! くれぐれもちんこだけは、気をつけて下さいね……』


「そ、そうでしたね。気をつけますよ……」

(チョッキンはごめんだぜ!)


『また新たな情報が入り次第、LINE入れとくんで! 兄貴! 負けないで下さいねっ!』


「ありがとうございます。!」


 ネル・フィードは電話を切った。


「ふう……」


「ねえ! ネルさんっ!」


 アイリッサが満面の笑顔でネル・フィードの顔を覗き込んだ。


「なんですか? アイリッサさん」


「最後のって……なーにかなっ?」


「あ……」

(へ、変な気合いの入れ方をしてしまった。満場エッチのプロフィールを作った時のノリで……)


「んん?」


「や、やっつける! という意味以外のなにものでもありませんよ!」


「じゃあ私もネカフェ一緒に入ってもいいですよね? 同じ部屋!」


「そ、それは危ないですよ!」


「倒すんでしょ? やったるんでしょ? 襲ってきたところを返り討ちにするんですよねっ!? そうなんですよねぇっ!?」


「そ、それは、そうです……」

(ヤ、ヤヴァい、アイリッサの機嫌がみるみる悪く……っ!)


「私もエンジェルパワー全開でいくんでっ!! エルフリーナだかフェミニーナだか知らないけどっ! けつの穴から指突っ込んで奥歯をガタガタ言わせぶしですよっ!」


「ガタガタ? い、言わせ、節?」


 なんとなーく、ホラーバッハに見せられたチェーンソーを持つアイリッサを思い出したネル・フィードだった。












 ピンポンパンポーン♪


※アイリッサさんの言っていた『けつの穴から指突っ込んで、奥歯をガタガタ言わせ節』は実在します。YouTubeでご覧になれます。


『ふーみん 奥歯ガタガタ』で検索!

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