第330話 シスコンのレオン
朝の人気情報番組めーざまーしー
昨晩、寝る前に見たポンコッツチャンネル。そこに出ていた太めの眼鏡をかけた男。
『スプラッシュ・カーター』
気の弱そうな見た目に反し、彼は非常に
そんな彼の死を、めーざまーしー8はトップニュースで伝えていたのだ。
『ネルさん。カーター君を殺したのって、絶対に闇の能力者だよね?』
「はい。そうだと思います」
『分かりました。じゃあ、今から出発の準備します……』
そう言って、アイリッサは静かに電話を切った。
「こ、こんなことになるとは。今日はポンコッツチャンネルの話でアイリッサと盛り上がろうと決めていたのに……」
エルフリーナに次々と殺されていく男たち。ネル・フィードはとても嫌な予感がしていた。深い溜息をつきながらベッドに寝転がり天井を見つめる。
「次の戦い、今までとは全く違うものになるような気がする……」
ネル・フィードはエルフリーナと会うネットカフェ『コットンラビッツ』の場所を確認しておくことにした。
時刻は午前10時を回った。
アイリッサの部屋。
姿見の前には昨日の時短ナチュラルメイクとは違う、気合いの入ったばっちりメイクのアイリッサが全身黒コーデで立っていた。
「やっぱりメイクが決まるとスイッチが入る。カーター君、今まで楽しませてくれて本当にありがとう。絶対に仇は取るから……!」
ガチャ
アイリッサは部屋を出た。
「あ、姉ちゃん仕事サボり?」
「うるさい。レオンこそ学校は?」
「サボり。あはは!」
「えー? 本当に?」
「んなわけないじゃん。今から図書館に寄って、それから行くんだよ」
「ぷひー、姉をおちょくりおって!」
「それにしても、姉ちゃんが全身黒コーデなんてめずらし。可愛いけど♡」
「可愛い? ま、まぁ、これには理由があるんだけどさ……」
「言わなくても分かるよ。カーター君のことでしょ? 姉ちゃん、かなりのファンだったし」
「うん。今日は明るい色の服は着られない。喪服のつもり……」
アイリッサの弟、レオン。
身長は170センチ。肩にかかる長さの美しい金髪。体の線は細く、顔は女の子の様にかわいい。まさにジェンダーレスな男子。
「そういえば、ジャポンの留学生の小濱って人が全身火傷で病院に運ばれたって話を大学で聞いたんだけど。姉ちゃんなにか知ってんじゃないの?」
「ぷひっ! 知らなーいよ!」
「嘘バレバレ! ジャポンの留学生の情報提供したんだからさー、教えてよ。姉ちゃん、ここんとこ仕事も休んでるし。謎なんだけど!」
「あんた、いちいち気にしてたんだ。どんだけ姉のこと好きなのよ!」
「知っての通り超好きだよ。ねえ? 彼氏とかできたの? 姉ちゃんには誰とも付き合って欲しくないんですけど!」
レオンの表情は至って真面目だ。
「姉の幸せを願わないとは。ひどい弟を持ったものだ。ぷひー」
「幸せは願ってるよ。僕とのね!」
「はあ、シスコンの弟。困っちゃう」
「姉ちゃん! ハグっ♡」
「あー、はいはい」
ハグっ♡ ぎゅう♡
くんくんっ♡
「んー! 姉ちゃんめっちゃエロい匂いするぅ〜♡」
「嗅ぐなっ! もういいでしょ! 離れろっ!」
「ちぇ。ねえ、キスは?」
「するかっ! はぁ、早くお姉ちゃんを卒業できるといいのにねぇ。かわいいのにもったいない……」
「キスがだめならさ、姉ちゃんの枕の匂い嗅いでもいい?」
「はあ? 枕? 朝よだれいっぱい垂らしてたから、嗅いでも臭いだけだよ?」
「んふ♡ それがいいんだよ」
「そう、どーぞご自由に。じゃあ、お姉ちゃん行くから!」
「あー! 姉ちゃんの謎の行動の秘密教えてよ! 本当に彼氏じゃ……」
「もう、探らないの! 枕の匂いで我慢してよ。絶対に匂いでシコるなよ。じゃあね!」
バタンッ!!
アイリッサは足早に家を出て行った。
「はあ♡ 姉ちゃん、好きな人の匂いを嗅ぐだけで我慢できる男なんて、この世にはいないんだよ」
アイリッサの弟、超シスコンのレオンは、枕の匂いでシコってから愛する姉を追うように家を出た。
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