第329話 めーざまーしー8

 ピピピピ……


 朝7時、ネル・フィード起床。ミロッカの夢を見る事なく、無事に熟睡する事ができた。


 ラジオをつける。


 部屋にクラシックが流れる。洗顔を済ませ朝食の準備に取り掛かる。


(エルフリーナ。その女が仮に闇の能力者だったとして明確になった自分本来の生き方……それがなんなのか……)


 グツグツ……グツグツ


 熱湯にソーセージを5本投入。それと同時に紅茶用のお湯をポットで沸かす。


 カチッ!


(ピンクローザ。彼女は完全にストレスのないストレスフリーな世界を作る為に、家族すら殺そうとしていた……)


 ジュウウウウッ!


 溶いた卵をフライパンへ流し込み、スクランブルエッグを作る。


(小濱宗治。彼は既存の美の判断基準を覆し、世界を醜い物で埋め尽くし、可憐と共に自分が美しいと呼べる世界を作ろうと思っていた……)


 スクランブルエッグを皿に移し、ケチャップを添える。そして、ソーセージも湯から取り出し皿に乗せた。


(ホラーバッハ。彼は愛する人を傷つけた世界を壊そうとした。そして、愛する人の為に、新たな社会のシステムを作ろうと考えた……)


 コポコポ……コポポポ……


 愛飲する紅茶アミーユをマグカップに注ぐ。そして、紅茶を一口飲んでからトーストにかじりついた。


 ザクッ


(エチエチというドラッグをばら撒く、男性器を切除して殺す……ここから推測できる事……エルフリーナは男を恨んでいる?)


 もぐもぐっ……


(待てよ……確かマレッドさんの家に向かうバスの中で聞いたギャル達の話では、エチエチで美人の先輩が死んだとか言っていたな。恨みも男に限った事ではないという事か……)


 ネル・フィードは朝食を終え、もう一杯紅茶を飲んだ。そして、脳が覚醒していくのを感じながら目を閉じ瞑想していた。


 すると!


 ネル・フィードのスマホが鳴った。


「おっと……ハイドライドか?」


 そう思い、スマホ画面を見ると着信はハイドライドではなくアイリッサだった。


「アイリッサ……ちゃんと8時に起きれたみたいだな……」


 時刻は8時を少し過ぎたところだった。ネル・フィードは電話に出た。


「アイリッサさん、おはようございます。ちゃんと起きれましたね。どうしました? 具合でも?」


 ネル・フィードの挨拶にもなかなか返事をしないアイリッサ。おかしいと思った瞬間、信じられないくらい元気のない声でアイリッサは言った。














『死んじゃった……』












「え? アイリッサさん?」


『死んじゃった……』


「アイリッサさん……分かりました。落ち着いて下さい。誰が死んでしまったんですか?」


『テレビ……』


「え?」


『めーざまーしー8……つけて』


「めーざまーしー? わ、分かりました! 今つけます!」


 ピッ! ピッ!


 ネル・フィードはテレビをつけ、めーざまーしー8にチャンネルを合わせた。



















 そこにはいたたまれない表情をしたキャスターとコメンテーターの姿が映っていた。右上のテロップを見てネル・フィードは驚いたッ!




《人気YouTuberスプラッシュ・カーターさん変死。似たような事例他にも》




「こ、これは……!」


 ネル・フィードはエルフリーナとの接触を前に、アイリッサの心のダメージがかなり心配だった。

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