第323話 兄貴んちっ!
アイリッサがポンコッツチャンネルを見ている頃、ネル・フィードはハイドライドから送られてきたLINEに目を通していた。
1. やりもく出会い系アプリ『満場エッチ』でネカフェ売春のカテゴリーから『ヴァルギナ』を探します。
「や、やりもく?」
2. ヴァルギナを見つけたらメッセージを送るっす。内容は『エチエチ希望』だけでも十分ですが、兄貴を選んでもらえるように自己アピールも添えるとさらにグッドっす!
「自己アピール……」
3、ヴァルギナから返事が来たらエルフリーナ確定っす!場所や時間を指定してくるのでそれに従うだけっす。
「エルフリーナ確定……」
ネル・フィードは説明を読んでも、どうすればよいのか分からず、結局ハイドライドに電話をした。
「すみません……」
『兄貴、たぶん電話かかってくると思ってましたよ。俺、今、駅近くにいるんすけど、兄貴んち行ってもいいっすか?』
「ほ、本当ですか? 助かります。私のアパートの場所ですが……」
『知ってるっすよ! そして2階の1番奥っすよね?』
「え? 言いましたっけ?」
『あ、兄貴の事ならなんでも分かるっすよ! あ、あははッ!』
「こ、怖いじゃないですか!」
「じょ、冗談すよ。兄貴に何かあった時にいつでも行けるように確認しておいたんですよ!」
(ちょっと前に嫌がらせをしようとして調べた、とは言えねぇ……)
「では、お待ちしています」
『はい! 20分以内には行くっすから、待っててください!』
電話を切って18分後。
コンコンッ!
「兄貴っ! ハイドライドっす!」
彼はやって来た。
ガチャリ
「ハイドライドさん、すみませんね、お楽しみのところ」
「大丈夫っすよ! 兄貴の為ならいつでも駆けつけるっす! 当たり前じゃないっすか! 兄貴は悪魔を相手にしてるんすから!」
「どうぞ。お上がり下さい」
「お邪魔しまっす!」
ハイドライドはネル・フィードがどんな部屋で暮らしているのか非常に興味があったのでテンションが上がっていた。
「こ、ここが……兄貴んちっ!」
無駄なものはない。家具もこだわりがあると言えなくもないが、あまりにも地味な物ばかり。そんな質素そのものな部屋に、ハイドライドは男の美学を感じずにはいられなかった。
「かっけー部屋っすね。ラジオとかも聞くんすね!」
「主にクラシックですが……」
「クラシック? やべぇっす! やっぱ俺とは生きてる世界が違うっす!」
「そ、そんな事は……」
「お? あれは、紅茶すか? 同じのが沢山ストックされて……」
「ああ、毎朝飲む物なので。あまり人気のある紅茶ではないようですが、私はとても香りが気に入っているんですよ」
「そうなんすか! んっと、アミーユ?」
「ええ。朝飲むと頭がスッキリして、思考回路を刺激してくれるんですよ。スイッチが入るといいますか……」
パカッ!
「あっ! こ、これはっ! 兄貴の大好きなソーセージッ!! んーと、メーカーは……」
「あ、あの〜、冷蔵庫は開けてあげないでもらってもよろしいでしょうか……」
ハイドライドは輝く瞳で憧れの兄貴の部屋を一通り見て回ると、ようやく落ち着いた。
「じゃあ兄貴っ! スマホ出して下さいねッ! 始めましょう!」
「は、はい……っ!」
2人はエルフリーナとの約束を取り付ける事ができるのか?
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