第321話 満場エッチのヴァルギナ

 情報屋じょえの仲間のタッカー、イーボー、カンジの3人が闇の能力者かも知れない女との接触後、命を落とした。


 エチエチの売人『エルフリーナ』


 その女にはここディーツの首都、ルベリンに行けば会えるのだとハイドライドは言った。


「分かりました。明日、ルベリンに行きますよ。アイリッサさんの能力で悪魔かどうか確認します!」


『あ、兄貴! ちょっと待って下さい。まだ話の続きがあるんすよ!』


「な、なんですか?」


『今、そばにアイリッサは……いるんすかね?』


「はい。いますけど」


「ぷひ?」

(私がいちゃマズイ話でもすんの?)


『そうなんすか。兄貴、今から俺がする話、淡々と聞いて下さいね。リアクションとかあまりしないで下さい。いいっすね?』


「はい。分かりましたけど」


『実はその死んじまった3人、全員が切り取られていたんすよッ!』


「ちんっ……!?」

(危ない。ついアイリッサの前で『ちんこ』って言うところだった。セーフ!)


『兄貴、いま確実に言いそうになったじゃないすか。だから淡々と、って言ってるんすよ!』


「す、すみません。続けてください」


『それがまあ見事に根元から綺麗にスパッと切り取られていたそうなんすよ。考えただけで俺、気ぃ失いそうっす……』


「その女は一体? ただのドラッグの売人ではないのですか?」


 ネル・フィードは『エチエチ』と『ちんこ切り』が結びつかずにいたが、その謎をハイドライドが1発で解決してくれた。


『それなんすけどね、そのエルフリーナって女は、もしてるんす』


「ネカフェ?」


『兄貴はそのへんうといっすよね。ネットカフェ、略してネカフェっす。そして、そこで売春してるからネカフェ売春なんす』


「な、なるほど……」


 アイリッサはネル・フィードの受け答えを聞きながら、不思議そーな顔をしていた。


「ぷう……」

(ちんっとかネカフェとか、女の話してるっぽいし。なんなの? 本当に闇の能力者の話してんの?)


 続けてハイドライドは、エルフリーナとの接触方法について話し始める。


『エルフリーナに会うには『満場まんじょうエッチ』っていう出会い系アプリで、ネカフェ売春のカテゴリーの中から『ヴァルギナ』ってやつを見つけてメッセを送るっす』


「ま、満場? ヴァ、ヴァル?」


『そして、そのメッセに『エチエチ希望』って書いて送信すると、売人であるエルフリーナとネカフェで会うことができるらしいんすよ」


「そ、そうなんですね。すみません ハイドライドさん、手順が右から左に流れてしまいました」


『あー、大丈夫っすよ。ちゃんと後でLINEしとくんで。今はとりあえずしゃべってるだけっすから!』


「よ、よかったですよ……」


『でもタッカー、イーボー、カンジ。その3人ともエルフリーナの外見に関しては完全に記憶を失っていたんすよ。病室でもただ『美しい』と譫言うわごとで繰り返すのみで』


「そうなんですか。見た目の特徴は分からない訳ですね」


『ぶっちゃけ『ちんこ取っちゃう系』の能力者なんじゃないっすか? 恐ろしすぎますね……』


「どちらにしてもかなりヤヴァい相手になりそうですね。分かりました。また手順をLINEで送っておいて下さい。後でチャレンジしてみます!」


『了解っす。引き続き情報はかき集めとくんで。お疲れっした!』


「ありがとうございました」


 アイリッサは電話をし終えたネル・フィードの正面に回り込む。


「ネールさん。今の話なんだったんです? 闇の能力者の話なんですよねっ?」


 ネル・フィードは、スマホをリュックのサイドポケットにしまった。


「と、とにかく、明日はアイリッサさんとルベリンのネカフェに行きますよ。いーですね?」


「ぷ、ぷひ? ネルさんとネカフェ? 行くの?」

(なんかドキドキなんですけどっ♡)


「闇の能力者が、そこにいるはずですからね!」

(少し一緒に行きづらい気もするが、アイリッサの天使の力は欠かせないしな……)


「そうだよね。いるよね……」


 恋する乙女アイリッサは、普通にネカフェでネルさんとイチャつきたいな、と思った。


「明日は朝、早くなくても大丈夫ですから。ルベリンにも飛んでいきましょう!」


「分かりました。8時には起きてるようにします!」


「はい。朝 連絡しますね」

(8時? ほんまに起きれるんかいな……)


「じゃあ、お疲れ様でーす。おやすみー! ネルさーん♡」


「お疲れ、おやすみ」


 ふたりは明日に備え、それぞれ帰宅した。しかし、アイリッサは帰宅後、衝撃の事実を知ることになる。

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