第314話 プロ意識

 時は10分程前に遡る。


 ホラーバッハが意識を失ったマギラバを、倍速フリーフォールで地上に投げつけたところに、アイリッサが天使の翼を羽ばたかせ、助けに飛び立ったところである。


「ネルさんッ!!」



 キラリンッ☆


 シュンッ!!
















 カシャカシャッ! パシャ!









「あはははっ! いいっ! 素晴らしいッ! ほらっ! もっと飛べよッ! 何やってんだッ!」


 アイリッサのエンジェル・ヒーリングで回復したみちのあかりは、上空で死闘を繰り広げる2人に巨大望遠レンズを向けていた。


「すげー! 天使のおまけ付きだッ! こんな写真誰も撮った事はないッ! 『みちのあかり』の名は全世界に衝撃と共に轟くんだッ!」



 カシャカシャカシャッ!


 ホラーバッハ邸の庭に入り込み、誰にも気づかれないように悪魔とエクソシストと天使の写真を撮りまくり、ひとり興奮していた。


「これでもう特許親父くそおやじに偉そうな事は言わせないぞッ!」


 カシャカシャカシャッ!


「おおっ! なんだあの光は! 美しい。ネル・フィードさんが光に包まれて浮いているッ! や、やばい! 手が震えるッ!」


 カシャカシャ!


 カシャカシャカシャカシャ!


「俺の夜空の写真をバカにしやがったクソ野郎どもッ! これで立場は逆転だッ! あはははッ!」



 カシャカシャカシャカシャッ!


「いかん。やはりヌードを撮っていた時の癖で女体にはどうしても目がいってしまう」



 カシャカシャカシャカシャッ!


「アイリッサさん、可愛い顔してるのに天然で、あ、あんなピチピチのパンツ履いてるからお尻の形が! エ、エロい♡」



 カシャカシャッ! カシャッ!


 みちのあかりは暫くの間、アイリッサの強調されたヒップラインに釘付けになった。


 大好きなネルさんの為に履いてきたピンクのスキニーパンツ。意図しないところで1人の男を興奮させていた。


 と、そこへアイリッサが戻ってきた。


 フワサッ♡ スタッ!


「あれ? あかりん、どこ?」


「こっちですよ! アイリッサさん」


 みちのあかりが小声でひょっこり現れた。


「だめじゃないですか! 人の家に勝手に入っちゃ!」


「いいんですよ。あんなクソ悪魔野郎の家なんですから。お陰様でバッチリいい写真が撮れましたよ」

(半分ぐらいアイリッサさんのお尻になっちゃったけど♡)


「うわぁ! すごいカメラですね! バズーカ砲みたいっ! ちょっと持たせて下さいよっ! かっこいい♡」


「だ、大丈夫ですか? ちょっと重たいですよ!」


 みちのあかりはアイリッサにカメラを持たせてあげた。


「ほ、ほんとだ。お、重たーい!」


「危ないですから。じゃあ……」


 みちのあかりがアイリッサからカメラを受け取ろうとした。


 その時ッ!


「なーんちゃって!」


「え?」



 シュルルルルルルルルルッ!!



 アイリッサの手から天使の糸が出てきてカメラに巻き付いたッ!


「な、なにをっ!? ちょっ!」


「あかりん。あの2人の写真を撮ってさ、売れっ子になろうとか、見返そうとか。プロ意識、低すぎね?」


「あ、ああ! な、なにをっ!」


 ググググッ! ギュウッ!


 ガッシャンッ!!


 カメラは粉々に砕け散った。


「そんなんだからいい写真 撮れないんじゃない? 目、覚ました方がいいよ」

(わ、私かっこよすぎじゃね?)


 みちのあかりはひざまづき、粉々になったカメラを手に取った。


「ひゃ、150万ルーロのカメラがっ、か、買ったばかりだったのに……」


「ぷっ、ぷひっ!! 150万っ!?」

(なーにー!? やっちまったなっ!)


 アイリッサはかなり後悔した。

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