第310話 筋肉魔獣ゴリラーバッハ

 ブシュンッ! ブシュウッ!


 狂気の筋肉ゴリラ魔獣と化したホラーバッハの肉体からは勢いよく蒸気が噴き上がる。


「ホラーバッハがゴリラーバッハになっちゃった。私の愛の銃弾、逆効果だった説。ぶひゃあー!」


『エルザさんってのも、案外ヤヴァい人だったようですね。分からないものだ。はあっ!!』


 シュゴオオオオオッ!!


 アイリッサのエンジェル・ヒーリングにより、体力、気力、ダークマター、その全てがフルリカバリーされたネル・フィードは全開で力を放出。


『ゴルルルルルッ! この姿になった僕に敵はない。再びボロカスにしてやるッ!!』


 ゴオオオオオオッ!!


 魔獣化したホラーバッハから凄まじい闘気が迸る。それに対し、マギラバは渾身の暗黒大烈斧ダークマターアックスを構える!


 ギュアアッ!! ドォウッ!!


『アイリッサさん、ここは危険なので地上に降りていて下さい。巻き添えを食わないように!』


「ネルさん、負けないで! ピンチっぽかったら飛んできますから!」


『大丈夫。もう油断はしない!』


 それを聞いたゴリラーバッハがニヤリと笑う。


『強がりやがって。ちなみに天使さん、あなたは殺さないから安心していい。僕の大事なパートナーになってもらう予定だからねぇ』


「ぷひっ? パ、パートナー?」

(こんなゴリラさんと結婚なんて100パー無理なんですけどッ!)


『さっきの愛の銃弾ってやつ、あれ最高だ。また、頼むよ♡ ゴルルルッ!』


「ぶ、ぶひゃあ!」

(はまっとる! このお方、相当はまっとる! 『愛の銃弾』は強化版アダルトVRじゃないっつーの!)


 フワサッ! シュンッ!


 ゴリラーバッハにどん引きしつつ、アイリッサはネル・フィードに言われた通り、地上へと舞い降りていった。


 ブオンッ! ガチャッ!


 ネル・フィードは両腕に力を込め、暗黒大烈斧ダークマターアックスを振り翳した。


『この世界には神も悪魔も必要ない。人々の営みと笑顔があれば、それで十分なんだ!』


『アホが。その人間の築いた社会がアリのそれ以下だと言っているのだ。僕たちが統治した世界でそれを思いしるがいい。ゴルルルッ!』


『ほざくなぁッ!!』


 ギュアアッ! 


 ブォンッ! ブアオッ!


 ネル・フィードの力のこもった連続攻撃が炸裂するも、ゴリラーバッハはそれをデカい図体でいとも容易くかわし続ける!


『確かにさっきよりも動きにキレがある。もう僕に対するはなくなったってわけだなッ!』



 『同情』



 ゴリラの魔獣と化したホラーバッハの姿を見ながら、ネル・フィードはやるせない気持ちを必死に抑えていた。


『お前にとっての最悪は、エルリッヒに出会ってしまったことだろうな。本当に運の悪い男だよ』


 その言葉にゴリラーバッハが全身の体毛を逆立て、身を震わせる!


 ゴウッ!!


『僕とエルリッヒさんの出会いは運が悪いだと? 運が良かったに決まってんだろうがぁーッ!!』


 ゴリラーバッハの強烈なメガトンパンチが空気を切り裂き襲いかかるッ!


 ドォウンッ!!


 ネル・フィードは身をねじりながらそのパンチを紙一重でかわし、反撃に転じたッ!!


『うおらぁあッ!!』


 ギュルルンッ!!


 ズドォンッ!! 


 ブシャアッ!!


 猛烈な遠心力を利用して振り下ろした暗黒大烈斧ダークマターアックスが、ゴリラーバッハの丸太のような腕に深くめり込んだ!



 しかしッ!



『うおおおおおおッ!!』


 バゴォ──────ンッ!!


 ゴリラーバッハの巨大な筋肉の収縮により、腕にめり込んでいた暗黒の斧は大きな音を立てて砕け散った!


 ドゴォッ!!


『うがはッ!!』


 さらに間髪入れずゴリラーバッハの強烈な前蹴りがネル・フィードの腹部に炸裂。その威力で10メートル後方へ吹っ飛んだ!


 苦痛に顔を歪めるネル・フィードを余裕の表情でみつめるゴリラーバッハ。彼の広げた右手に、の『闇の手榴弾』が出現した!


『ゴルルッ! しつこいあんたには、特別製の紅蓮爆炎手雷弾ブラッディ・グレネードを喰らわせてやるよ!』


『特別製……だと?』


『その通りッ! 喰らうがいいッ!!紅蓮爆炎手雷弾ブラッディ・グレネード精神破壊メンタル・ブレイクダウンッ!』



 ズオオオオオオオッ!!



 ドウンッ!!



『メ、メンタルブレイクッ!?』 





























 ドッガァ──────ンッ!!



 ネル・フィードは、未だかつてない闇の世界へといざなわれる!

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