第306話 愛の銃弾

 アイリッサの天使の力はネル・フィードのピンチを救う形で覚醒。彼女は背中の純白の翼を羽ばたかせながら、慈悲深き眼差しをホラーバッハに向ける。


「僕をそんな目で見るな。僕とエルザさんの聖域に入ってくるな……!」


 アイリッサはため息をつく。


「エルザさん、エルザさんって。そんなにエルザさんのことが大事なら彼女が悲しむようなことはしないって、ならないのかなぁ?」


「な、なんだとっ!?」


「エルザさんは優しい人。そして、社会人として尊敬もできた人。そうなんでしょ?」


「あ、当たり前だ……!」


「エルリッヒって人が言ってた通り、エルザさんも人並みに憎んだり、けなしたりすることはあったかも知れない。でも、絶対に殺人なんて望んでないから」


「う、うるさい。優しすぎたエルザさんの無念を晴らせるのは僕だけだ。エルリッヒさんと出会い、この力を得たのも運命。エルザさんも絶対に喜んでくれているんだ!」


「はいはい、分かったよ。男ってのは本当に自分本位だよね。特に君、お子ちゃま決定!」


 びしっ♡


 アイリッサがホラーバッハ君をプリティーに指差した。


「お前、ガチで殺すぞ……!」


「残念だけど、悪魔のあなたに天使の私を殺すことはできないんだなぁ」


 ブウウウウンッ! 


 ピカァッ!


 ……カチャッ!


 アイリッサの右手には光輝く拳銃が握られ、その銃口は静かにホラーバッハに向けられた。


「天使が拳銃だと? なかなかミスマッチな光景だな。それで僕を撃つつもりなのか?」


「そうね。でもこれはただの凶器じゃないんだよ。愛の銃弾が込められた天使の拳銃なのッ♡」


「天使の拳銃とか、愛の銃弾とか、ちょっと言ってる意味がよく分からないな……」


 じりっ、じりっ!


 ホラーバッハは力づくでアイリッサから拳銃を奪おうと、警戒しながら距離を詰める。



 じりっ……! 



「そんな虚仮威こけおどしが僕に通用すると思うかぁ! よこせぇッ!!』


 グアッ!!


 ホラーバッハがアイリッサに襲いかかったッ!!


Trueトゥルー Loveラブ……ッ!」



 ガチッ!





 バッキュウ──────ンッ!!





 ピキュンッ!!


「あがっ……!!」


 アイリッサは躊躇ためらうことなく、拳銃の引き金を引いた。愛の銃弾はホラーバッハの眉間に命中したッ! 


「ホラーバッハ君! あなたには今からへと旅立ってもらうしんよ! ぷひっ♡」

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