第303話 制空権

 ビューウウウウッ!


 上空300メートルで睨み合う2人。


「あんたには僕が悪者にしか見えていないようだが、見る人が見れば僕は救世主なんですよ」


 バサァッ!! バサァッ!!


 ホラーバッハの黒翼が、その羽ばたきの勢いを増す。


『そこまでこの世界は多様性に富んではいない。お前は悪だ。常識は覆らない。その翼は私がもぎ取る!』


 シュゴオオオオオッ!


 ネル・フィードは両手にダークマターを放出し始めるッ!


「僕はね、その常識を覆えして、彼女が喜ぶ理想的な社会のシステムを作り上げるんですよ。エルザさん、待ってて下さいね。あっははははッ!」


『それがお前の明確になった自分らしい生き方というわけか。悲劇としか言いようがない……!』



 バサァッ!!
















「黙れ! 覇蛇壊滅波バジリクス・ディストラクションッ!!」


 ニュルンッ! ズギャアオッ!!


『うおおおおっ!!』


 ドオオッンッ!!


『ギャオブウッ!!』


 高速で唸り、襲いかかって来たバジリスクにネル・フィードの暗黒のカウンターパンチが的確にヒット!


 ギュアアッ!


 ギュアアッッ!!


 一瞬動きの止まったバジリスクに、ネル・フィードは手を緩めない。ダークマターの二刀流サーベルを振り下ろす!

 

『でやああああッ!!』


 ズバッ! ズバッ!!


 シュンッ! ニュルンッ!!


 間一髪でサーベルを避けたバジリスクは、慌ててホラーバッハの体内へ逃げ帰った。


『まだまだぁ! はああっ!!!!』


 ブシュウウウウウッ!!


 バシュウンッ!!


 ネル・フィードのサーベルが熱を帯びる。先の小濱宗治戦で目覚めたヒート・ダークマターが唸りをあげる!


 バッ!!


 それを見たホラーバッハはすかさずネル・フィードに向け左手を翳すッ!


「させん! 紅蓮爆炎手雷弾ブラッディ・グレネードッ!!』



 ドウッ! ドウッ! ドウンッ!



『これはッ!? ヤヴァいッ!!』


 ネル・フィードの周りに闇に包まれた『血のような赤黒あかぐろい手榴弾』が3発設置されたッ!


「吹っ飛べぇ─────ッ!!」


 ドオオッ! ドンッ! ドンッ!


 ドガア─────ンッ!!


 赤い衝撃と爆風が一瞬にしてネル・フィードを飲み込んだッ!













 ドォォォオ…………

















「あはははッ! あんた無敵すぎでしよっ!? 生きてるしッ!」


 ネル・フィードの右腕は肘から下、右足は大腿部の根元から吹っ飛んでしまっていた。


『ダークマターの体がズタボロだ。悪魔の力、相変わらずの化け物だな……!』


 バサァッ! バサァッ!


「どうやら制空権は僕が握ったようだ。次で頭も吹っ飛ばしてやるッ!」


 ネル・フィードは破壊された肉体を回復させながら思った。




















 『負けるかもしれない』

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