第302話 決然たる

 ブワサッ!!


 話し終えたホラーバッハの背から、怪しくも美しい黒翼がその姿を現した。


「この世界は生まれ変わらなけばならない。その邪魔をするというのならば、相手が神だろうが天使だろうが、戦争の始まりだッ!」


 ギシャアッ!!


 さらに、右手には凶暴極まりない猛蛇もうじゃバジリスク。おぞましくも気高い姿でふたりを威嚇する。


「話し合うつもりは、毛頭ないと言うことですね……」


 グッ!


 ネル・フィードは気持ちを切り替える為、全身に力を込める。


「今の僕を見ればそれが皆無だと一目で分かるでしょう? ネル・フィードさん、そんな間抜けなことを言っている時間ではありませんよ」


 黒翼と猛蛇を発動させ、邪悪さをまとったホラーバッハに、ネル・フィードは怒りと悲しみが宿った眼差しを向ける。


「ホラーバッハ。あなたは変わろうとしていた。エルザさんと出会い、その志はさらに大きくなった。そんな中、彼女を失い葛藤しながらも、今まで強く生きてきたあなたに、私は尊敬の念すら抱きましたよ」


「それはどうも。僕もそんな自分が嫌いではなかったです」


「だが、今のお前はただのシリアルキラーだ。エルザさんにあの世で詫びを入れるんだなッ!」


「あんたなんかに僕とエルザさんの聖域に立ち入って欲しくはないんだよ! はあっ! はあっ! はあっ!」


 ホラーバッハは俯き、肩が上下する程に息が荒くなる。今にも襲いかかろうとしているのが分かる。


「アイリッサさん……」


「は、はいっ!」


「あかりんさんを、頼みます!」


「はいっ!」
















 ドオ──────ンッ!!




「きゃあっー! ぷひー!!」


 ふたりは爆音と共に高速で上空へと舞い上がっていった!


 ホラーバッハの黒翼に対し、ネル・フィードはダークマターを操作した反重力による飛行ッ!




 ビューウウウウ……



 バサァッ!



「あんたも飛べるんだな。その力、実に禍々まがまがしい。何者だ?」


「エクソシスト。と言ってもあなたに嘘はバレバレか……」


「ああ。とても歯が痛むよ。あんたはエクソシストなんかじゃない。ついでに言うならネル・フィードでもない。そうなんだろ?」


「ご名答……!」


 ギュアアアアッ!!


 シュボォォウッ!!


 ネル・フィードはダークマターを放出。その見た目をマギラバへと変えた。


「なるほど。それが本当のあんたの姿というわけか。一気に歯の痛みが消えたよ」


『それはよかった。あなたの心の傷の痛みも、ダークソウルと共に消し去ってあげますよ。人として死ぬんです。ホラーバッハッ!』


「ふっ、やなこった……」


 悪魔の力を得て、殺人鬼と化したホラーバッハとの空中戦!


 制するのはどっちだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る