第300話 制裁の宴
そこまで話すと、ホラーバッハはラスト1本のレッドブルーをビニール袋から取り出し、一気に飲み干した。そして、空き缶とビニール袋をなにかを振り払うように道端に放り投げた。
カコン! カラカラ……
「少しばかり、おしゃべりが過ぎましたかね……」
「ホラーバッハ……!」
ネル・フィードは全身の力が抜けていく感覚と共に、戦意の喪失にも似た感情にも襲われていた。
「パウル・ヴァッサーマンが女というのには驚きましたよ。確かピンクローザさんがパウルの話をしたときは彼と言っていましたから」
「あのお方は我々の思考の領域を超越しておられる。なにが起きても不思議ではない。性別など取るに足らない問題だと思いますがね」
すると、先程までのホラーバッハの話を聞きながら涙ぐんでいたアイリッサが話に割って入った。
「あの、ひょっとして、あなたが線路に置いた女性の遺体って、エルザさんの死を侮辱した人たち?」
「ああ、そうですよ。5人目までは、ですけど」
「そ、そっか。もうそれ以外の人も既に、殺してるんですね……」
「あの女どもは僕の愛するエルザさんも認めるレベルのクズなんだ。真っ先にミンチにしてやったよ。エルザさんは天国だが、あいつらが行くのは地獄だろう」
ホラーバッハは右手に持っていた高級ブランドの鞄を、自宅の塀に立てかけるように置いた。
「クズ女どもの恐怖に怯える顔が堪らなかった。命乞いしたり、しょんべん漏らしたり。それはもう実に最高な制裁の宴だったのですよ」
「制裁の宴だと?」
────36日前
僕は仕事を早退し、ある女が買い物を済ませ出てくるのを待っていた。偶然を装い再会する為だ。来た。
「あれ? ホラーバッハ君?」
「あれ? お久しぶりです。マリオンさん」
「どうしたの? こんなとこで……」
このマリオンという女は、3年前に寿退社していた。噂では長年の不倫の末の略奪婚らしい。
『あははっ! そうね。ブスで長生きするより来世に期待した方がいいかもね!』
12年前、給湯室でこのセリフを吐いたクズ女だ。まず、ひとり目はコイツに決定。
「あっ、そろそろ行かなきゃ。今夜は夫の誕生日パーティーでね、お客様も来るから大変なのよ。ホラーバッハ君もそろそろ結婚したら? じゃねー!」
「あはは。僕はまだ。それじゃ」
僕はマリオンの後をつけた。大型スーパーの駐車場、車に荷物を載せ始めた。今、周りに人はいない。
「さて、拉致るか……」
ブワサッ!
僕は背中に黒い翼を出し接近。一気にマリオンを抱え上昇した。
「きゃああああっ! なっ、なんなのよぉおっ! きゃあああっ!」
「マリオンさん、制裁の時間です」
「ホ、ホラーバッハ君っ!?」
僕はグロビラ湾の上空を目指した。
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