第286話 みちのあかりの事情

「最強のエクソシストとスーパーエンジェルですか。それは頼もしい」


「すでにわたくしたちは、ふたりの闇の能力者を悪の道から救い出したという実績があるんです!」


「そうなんですね!」


 それを聞いたみちのあかりは、さらに別の黒翼の男の写真を出しながらを話し出した。


「私が翼の彼を初めて見たのが8日前。そして、写真に納めたのが4日前。彼は4日置きに犯行を犯しているような気がするのです」


「4日置き、ということは今夜、翼の男は可能性があるということか……」


「それらの写真が女性の遺体を線路に置いて戻ってきたところなら可能性は高いでしょう。今夜も女性を殺して……内臓を……うっ」


 みちのあかりは軽い吐き気を催し、顔色が悪くなった。


「ネ、ネルさん、その人の家に行ってみましょうよ!」


 それを聞いたネル・フィードはゆっくりと炭酸水を飲み干し、ソファーから立ち上がった。


「そうですね。その男がいま家にいるのかだけでも確認しておく必要はありそうですね」


「私の天使の嗅覚があれば、分かりますからね!」


 キラリン─☆


 アイリッサが可愛くウインクした。


「あかりんさん、教えてもらえますか? 黒翼の男の家の場所を!」


「分かりました。近くまでお連れします。行きましょう!」


 こうして3人は、さっそく闇の能力者が在宅しているのかを確認しに行くことにした。玄関できゃわいいレイシアとアリシアにじゃれつかれつつ家を出た。


「にゃー!」 「ごろにゃーご!」


「レイシア、アリシア、バイバーイ♡ またねー! ぷひー♡」


 バタンッ!








 黒翼の男の家は、みちのあかり邸から東の方角にあるのだという。高級住宅街の午後4時。意外な程、人の気配はなかった。


 そして、閑静な住宅街を歩くこと数分で目的地の家に辿り着いた。


「あ、あそこの家です。間違いありません。あの2階のベランダから、黒翼の男は中に入って行ったんです」


 その家は、悪魔が暮らしているとは思えない程に美しく、洗練されたデザインの300坪はある豪邸だった。


「あかりんさん、ありがとうございました。では、自宅にお戻りください」


 ここからは、闇の能力者といつどのような形で遭遇するか分からない。ネル・フィードは、みちのあかりの身を案じたのだ。


 しかし、彼の返答はネル・フィードのその気持ちを完全に無視したものだった。


「わ、私は帰りません……」


「あかりんさん、事情はご存じですよね? 本当に危険なんですよ、闇の能力者は」


「あかりん、帰った方がいいよ!」


 ふたりに説得されるも、みちのあかりに帰る気配はない。それどころか、背負っていたリュックからカメラを取り出し始めた。


「私はあなたたちと黒翼の男の戦闘シーンを撮る。そして、もっと有名にならなくてはいけない。わ、私を馬鹿にした奴らを見返してやるんです!」


「あかりんさん、あなたなにを……」


 その時!


「ネルさん、悪魔の臭いがする! 近づいてくる!」


 アイリッサの天使の嗅覚が、悪魔の接近をいち早く感じ取った!

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