第281話 アイリッサの企み

「ぶひゃー! 遅くなりましたー!」


 アイリッサがナチュラルメイクを施し、ピンクのカラーパンツに白のVネックブラウスでやって来た。


「待ってましたよ。あれ? アイリッサさんがスカートじゃないの初めて見ましたね」


「え? あ、ああ、私も天使の力でネルさんをサポートしなくちゃだし。動きやすい格好の方がいいかと思って。はっ! とうっ! ぷひ♡」


 アイリッサはパンチとキックとキュートな笑顔を決めて言ったが、その笑顔の裏にはある企みが潜んでいたのである。


(私ってば実はスタイルいいんだからっ。胸は〜なんだけど。お尻は形も大きさもエロいってマレッドさんに言われたことあるし。今日はぴったりパンツでお尻を強調して、ネルさんに私を女として意識してもらうのだ♡)



 これから闇の能力者を相手にするというのに、やはり恋する乙女は、なによりも強い!




「……って、聞いてますか? アイリッサさん」


「へ? あっ、えーと。なんでした? ぷひ♡」


「いいですか? さっきアウトドア派さんからの追加情報が入ったんです」


「そうなんですか? アウトドア派やりよりますなぁ!」


「で、行き先が決まりました。シェリーモンシェリに到着したら、ある方のお宅に伺います」


「お宅? そんなとこまで突き止めてるんですか?」


「ええ。その方が、闇の能力者の居場所を教えてくれると思います」


「ぶひゃあ、ちょ、直行……」

(エッシェル塔ぐらいは行けると思ってたのに。ざ、残念ッ!)


「さっ、今に電車が来ます。まずはランクフルート経由で、プランツの首都のパリスヒルに向かいます。切符、渡しておきますね」


「あ、ありがとうございます」


 こうしてふたりは、アウトドア派の情報に基づき、シェリーモンシェリに向かう電車に乗った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る