第278話 眠れない午前2時

 ハイドライドが語った残酷過ぎる情報。遺体の状況からして、何者かの手が下されている可能性がかなり高いと判断できる。


 ディーツの隣国『プランツ』


 その事件は、ディーツの隣国『プランツ』のシェリーモンシェリで起きているのだという。


「ハイドライドさん、情報ありがとうございます。アウトドア派さんにもそうお伝えください。はい。では……」


 ピッ


 さすが情報収集のスペシャリスト。報道に規制がかかっているにもかかわらず、今日のうちにそれを見つけ出してしまうとは。


 最初こそ戸惑ったものの、ハイドライドとその仲間に頼ってよかったと、ネル・フィードは思っていた。


「プランツ、シェリーモンシェリか。明日、早めに出発するか。本当は嫌だが、アイリッサの能力がなければ能力者の特定は不可能。連絡しなくては……」


 アイリッサの『悪魔の臭いが分かる嗅覚』と『ダークソウルを引っ張り出せる天使の力』


 それらが、この事態『終息の鍵』となることは、小濱宗治との戦いの中で嫌なほど痛感していた。


 ネル・フィードはアイリッサに電話をした。


『ネルさん、どうしました? 悪魔人間の情報が入ったんですか?』


「その通りです。アウトドア派さんから情報が入ったとハイドライドさんから……」


『やるねー、アウトドア派! 仕事が早い!』


「明日、プランツへ行きます。シェリーモンシェリという街です」


『ぷひょー♡ ネルさんと旅行だあ! わーい!』


「わーい! じゃないですよ。かなり危ない奴が相手になりそうなんです。気は引き締めておいて下さい。分かりましたか?」


『エンジェル・アイリッサ、気を引き締めます! 明日はTバック履いていきます!』


「そーゆー意味でなく。では明日の朝7時にバドミールハイム駅で待ち合わせで。寝坊だけはしないように!」

(たぶん、するな)


『は、はい! 今夜はターモリ倶楽部見ないで早く寝ます!』


「はい、では、おやすみなさい」


『おやすみなさーい!』



 ピッ


「今日はさすがに疲れた……」


 ネル・フィードは普段よりも1時間早い6時にアラームをセットし、ベットに横になった。1分も経たないうちに眠りについた。






























 ネル・フィードは夢を見ていた。



 それはとてもいい夢ではなかった。



 ある女の夢だ。



 自分のことを自分の理解を越えて愛してくる女の夢だ。


 ネル・フィードはその女を知っている。名を『ミロッカ』と言った。


 彼女もネル・フィードと同じ、ダークマターの種族。


 ミロッカはネル……いや、マギラバの活動を応援している者のひとりだった。



「はい♡ クッキー作ったの。食べて」


「うわ、おいしそう。ありがとう、ミロッカ」


「マギラバの口に合うといいんだけどぉ……」


「どれどれ〜いただきまーす!」


 パクッ! もぐもぐっ!


「どう……かな? まずくない?」


「まずくなんてないよ! めっちゃ美味しい。ミロッカはお菓子作りが上手だね」


「えへっ。よかった♡ また作るから食べてねっ……!」


「もっちろん!」











『私のとかとかがたーっぷり入った最高に美味しいミロッカ特性クッキー♡ ちゃーんと味わって食べてよねえっ♡ あはははッ!』
















「うっ、うわあ!!」


 ネル・フィードは悪夢で目が覚めてしまった。時刻は午前2時になるところだった。



「はあっ、はあっ! ま、またかよ、どうして……」


 ネル・フィードは再び眠るのに1時間かかった。

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