戦慄の黒い翼 ホラーバッハ編

第277話 アウトドア派からの情報

 小濱宗治の闇の能力。インフィニット・ステアケースから絶妙なコンビネーションで脱出する事に成功したネル・フィードとアイリッサ。


「さて……」


 ふたりの足元には意識を失っている小濱宗治。ネル・フィードのギャラクティカ・バーニング・ブレードのダメージは相当なものだった。


「わ、私、とりあえず救急車呼びますッ!」


「はい。お願いします」


 傷ついた小濱宗治を見ながら、ネル・フィードは拳を握った。そして、打倒パウル・ヴァッサーマンを強く心に誓った。







 程なくして救急車が到着。救急隊は小濱宗治の状態に驚いた。


「彼ですかッ!? 一体何がっ? 酷い火傷と聞きましたがっ……」


 その時、小濱宗治が微かに意識を取り戻し、言った。


「僕はですね……焼身自殺をしようとしたんですよ……そこのふたりに助けられましてね……ヒャハハ……」


 小濱宗治はそれだけ言うと、再び意識を失った。


「焼身自殺? おいっ! 急げ!!」


 隊員たちは素早く彼を救急車に乗せ、ふたりに一礼すると、サイレンと共に病院へと向かっていった。

 

「小濱ちゃん、ネルさんにやられたとは言わなかったですね」


「そうでしたね。なにかが彼に伝わってくれたのならいいんだけど」



 こうして、ピンクローザに続いて小濱宗治からもダークソウルを取り除き、パウルのディストピア創生の野望を打ち砕くことに、また一歩近づいたのだった。












 その夜。


 明日からの能力者探しのヒントになる記事などがないか、ネル・フィードは入念に新聞に目を通していた。すると、スマホにハイドライドからの連絡が入った。


『兄貴。夜分に恐れ入ります』


「いえ、どうしました? ひょっとして……」


『そうっす。アウトドア派から情報が入ったっす!』


「本当ですか。新聞やニュースなどを見ても、それらしき情報がなくて困っていたところなんですよ」


『でしょうね。俺がアウトドア派から聞いた情報は報道機関なんかには規制がかかってるっす。それだけヤベェってことっすよ』


 電話越しでも、ハイドライドの声が震えているのがはっきりと分かる。ネル・フィードは、落ち着いたゆっくりとした口調で問いかけた。


「報道機関に規制とは、一体どんな情報だったんですか?」


 ハイドライドは5秒ほど間をあけてから話し出した。


『それがむごたらしいったらありゃしないんすよ。よく聞いて下さいよ。まず、女が深夜の貨物列車に轢かれて死ぬって事故が続け様に8件起きてるっす』


「貨物列車に? 8件?」


『そうっす。まず普通じゃありえねぇっすよね? で、さらにそこからありえねぇ話が続くっす』


「はい。なんですか?」


『その遺体、そもそもみたいなんすよ!』


「な、内臓がっ?」


『そうっす。事故現場には内臓がどこにもなかったらしいっす。すなわち、誰かが女を殺して、内臓を抜き取った後に、線路に置いて列車に轢かせたってことになるっす。狂ってますよ。悪魔の仕業としか……』


「それは、決まった様なものですね」


『アウトドア派がさらに、その犯人に迫る情報をかき集めてるとこっす。また連絡します』




 3人目。かなりヤヴァそうである。

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