第276話 異世界、崩壊

 エンジェル・アイリッサ。なにをどうするつもりなのか? このインフィニット・ステアケースから、無事に元いた世界に帰ることができるのか?


「ネルさんはピンクローザさんからダークソウルを吸い取ったって言ってましたよね?」


「はい。エクソシストの技で」


「はっきり言って、これも感覚なんですけど……」


「感覚?」


「私はこの天使の糸を使って、ダークソウルを引っ張り出せる気がして仕方がないんですよ」


「ダークソウルを引っ張り出す?」


 ピンクローザのダークソウルは、意識の奥に閉じ込められていた本当のピンクローザが目覚めたことにより、体外へ自然と放出された。


 それをネル・フィードがブラックホールで吸い取ることにより、ピンクローザからは悪魔の力がなくなり、元の人間に戻すことができたのである。


 今回の小濱宗治に関しては、その魂にこびり付いたダークソウルに直接アタックすることは不可能だと思っていた。


 それを可能にする力。


 天使の力。


 ネル・フィードはそれに期待する。


 アイリッサは意識のない小濱宗治の元へ。


「やってみます!」


「お願いします!」


 アイリッサが立ったまま小濱宗治の胸元に手を翳すと、その手が光り輝き、天使の糸が1本、ゆっくりと下に向かって伸びていく。


 キラキラ キラキラ


「な、なんて美しいんだ……」


 ネル・フィードは思わず声が出た。


 天使の糸は、小濱宗治の左胸に静かに吸い込まれていく。アイリッサは目を瞑り、集中する。



 ぐぐっ!



「ネルさん。今、ダークソウルを捕まえることに成功しました……!」


「本当ですか? すごい!」

 

「引っ張り出しますので、吸い取る準備をお願いします」


「はい。分かりました!」


 ネル・フィードは右手にブラックホールを出し、ダークソウル吸収の準備を整える。


 ギュガガガガッ!! ゴウッ!!


「OKです。アイリッサさん」


「では、いきますよ!」


「いつでもっ!」


 アイリッサは腰を落とし、気合いを込めて天使の糸を引っ張り上げた!




 ぐあんっ!!



「ダークソウルゥッ!! 出てこいやあああ──────ッ!!!!」


「こ、来いやー!」

(アイリッサ、急にスイッチ入ったな)



 ズッ! ズズズッ!



 ズァッ!!






 シュボオオオオオウッ!!



「ネルさんっ! こんなん出ましたけどおー!! ぷひー!」


「まさにピンクローザさんの時と同じ、ダークソウルです! 天使の糸を解いて下さい! 吸収に取り掛かります!」


「はいっ! おなしゃーす!」


 アイリッサは天使の糸を解き、ネル・フィードの後方へ!


「ダークソウルを吸収し、彼を人間に戻します!」


「ネルさん! いっけええっ!」





 ズオオオオオオッ!





「ブラックホール・サクションッ!」



 ギュガガガガッ! ドォウッ!!



 ブオオオオオオオオオオオッ!!




 小濱宗治のダークソウルが、どんどんブラックホールに吸い込まれていく。ピンクローザの時と同じく、5分程ですべてを吸い取ることができた。



 しゅううううう……



「はあっ、はあっ! 終わりました」


「ネルさん、お疲れ様です!」


 周りを取り囲むように、乱立していた螺旋階段が音もなく崩れていく。インフィニット・ステアケースが崩壊し始めた。


 そして今、ふたりの目の前に広がるのは、バドミールハイム自由大学の裏路地。元の世界に戻ってくることができたのだ。


「ふう、よかった。一時はどうなるかと……」


「あっ! ネルさんっ!!」


「な、なんですかっ!?」












「うんち踏んでる。ぷひひ♡」


「ゔあっ! 本当だ! 最悪……」



 闇の能力者、残り5人。

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