第275話 ミロッカ

 何時間経ったのだろうか。



 ネル・フィードの強烈な一撃で動けなくなった小濱宗治、そして眠り続けるアイリッサ。その2人を交互に見つつ、思案にふけるネル・フィード。


 小濱宗治がその気にならなければ、このインフィニット・ステアケースから出る事はできない。どうすればよいのか?


 説得、抹殺……2択?



 そんな中、熱い風呂上がりのビールとソーセージ。ネル・フィードの頭の中にそれらが自然と湧いてきて、思考を阻害する。


「はあ! いかんいかん! それどころでは……」


「ヒャッハハハ。腹でも減ってきたか? ちなみに……僕を殺してもここからは出られない。あんたらの死は……確定……だ」


 指一本動かせない状態の小濱宗治が絶望的な事を言ってきた。


「小濱君……」


「む、無駄だぜ。僕は、絶対に……インフィニット・ステアケースを解かない……ヒャハハ……ハ」


 そう言って、小濱宗治は再び意識を失った。


「くそ……」



















 さらに時間が過ぎた。





 そして、ネル・フィードも、知らない間に寝てしまった。




















 ネル・フィードは夢を見ていた。



 それはとてもいい夢ではなかった。



 あるの夢だ。



 自分の事を、愛してくる女の夢だ。


 ネル・フィードはその女を知っている。名を『ミロッカ』と言った。


 彼女もネル・フィードと同じ、ダークマターの種族。


 ミロッカはネル……いや、マギラバの活動を応援している者の1人だった。


「そう、だから俺はミューバには神なんてものは要らないと思っているんだ」


「うんうん」


「肉体だってあっていいと思うんだよ。なんでミューバの民にわざわざ腐神と戦わさせなくてはいけないんだ?」


「確かにそうだよね」


「彼らは彼らで宇宙の理など知らずに平和に暮らしているんだよ」


「そうね。分かるっ! マギラバの考え。そうだよねっ!」


「本当? ありがとうミロッカ」


「うん。私マギラバの事、応援してるから♡」
















 ネル……










 ネルさん











 ネルさんっ!











 ネルさんってばっ!















「ネルさんっ! 起きろぉー!!」




「う……あ? アイリッサさん。目が覚めたんですね」

(あ、あの女の夢を見るとは。相当心理的に追い込まれているのか……)


「小濱ちゃん、倒したんですね!」


 アイリッサの笑顔が弾けた。


「は、はい。ですが、この異空間から出る術がなくて、困っていたんですよ……」


「ここから? 出られない? 小濱ちゃん倒したのにですかっ!?」


「ええ。彼が自分の意志で能力を解かない限り、元の世界へは戻れないんです」


「ぷひひ♡ わっかりました! では、わたくしエンジェル・アイリッサ! 頑張ってみますっ!」


「アイリッサさん……?」


 目覚めたアイリッサ。何か秘策があるのだろうか? それともいつものおちゃらけモードなのか?


 そして、ネル・フィードが見た夢に出てきた可愛らしい女性、ミロッカとは一体?

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