第273話 くそブス女

 小濱宗治の中二病奥義。


 無限階段の異空間インフィニット・ステアケースの中では具現化され、強烈な技として見事に発動っ!


『ガオオオオオォォッ!!』


 子供の頃から頭の中でムカつく奴を何度も繰り返し殺してきた必殺技。極黒ごくこく邪龍じゃりゅう滅殺めっさつが雄叫びをあげながらネル・フィードに牙を剥くッ!


『効くかぁ──────ッ!!』




 ズドォォォオ──────ッ!!



 ネル・フィードはダークエネルギー全開の剣で邪龍を受け止めたッ!



『ギャオウウウウウッ!!』




 ググググッ!! ギギギギッ!!



『うおお─────ッ!!』

(俺の全力とほぼ互角だとっ!?)


『ヒャッハー☆ 俺にはまだこのがあるんだぜぇ!! 全開放のさらにその上がよぉ!!』


『さらに上だとぉ!?』

(おいおい、ふざけるなよ!)


 小濱宗治は目を瞑り、精神集中ッ!


『…………開眼かいがんッ!!』


 ドォォォオ────ンッ!!


 ピカァッ!!


 小濱宗治の額に不気味に輝く第3の目『邪眼』ではなく『凶烈きょうれつ魔眼まがん』が現れた。


 凶烈魔眼は極黒邪龍滅殺波の威力を34%アップさせるのだ。そういう設定なのだ。


 ズオンッ!! ドォウッ!!


『くっ……!!』

(お、俺の全力を超えて来やがる! ヤ、ヤヴァい!)


『ガオオオオオォォッ!! ガオオオオオォォンッ!!』



 邪龍の牙がネル・フィードに食い込み始めた。その時ッ!



 ギュルルルルルルルルッ!!



 ビキキキキッ!!



『ウギャアアアアッ!!』




 邪龍が苦しみ暴れ出したっ!!


『これは悪魔の糸!? アイリッサさん!?』


「はーい! エンジェル・アイリッサでーす! ぷひひ♡」


『ちっ! あのぁ!! 可憐の時と言い、邪魔なんだってぇ!!』



 ギュウウウウッ!!


 バッシュンッ! バッシュンッ!


 バシュウッ! 



『ウギャオッオオ!』



 ドサッ! 


  ドサッ! ドサッ!



 しゅううううう………!!




 邪龍が輪切りにされて消え去った。


「ネルさん。ちなみにこれは悪魔の糸じゃないんですよ。使なんですからね!」


 確かにアイリッサの指から放たれている糸には、ピンクローザが使っていた時とは違う黄金の輝きが備わっていた。


『確かにピンクローザさんが使っていた物とは、似て非なる物のようですね……』

(天使の力、すごいぞ。対、闇の能力者に関して言えば、私よりもよっぽど戦えるんじゃないか?)


「ちなみに私の愛用のブラは天使のブラなんですけど……見たかったら、見せてあげても……あ……」



 フラッ


   バタリッ!



 アイリッサが意識を失って、倒れてしまった。


『アイリッサさん!?』


 ネル・フィードは慌てて駆け寄り、アイリッサを抱き起こす。


「ネ、ネルしゃん……すみましぇん……わ、私、私……」


『はい! どうしましたっ!?』












「寝ます……」


『えっ!?』


 そう言うと、アイリッサは深い眠りに堕ちていった。


「くう……くう……ぷひー」


『ね、寝た。天使の力を使った影響か? あれ程の力、無理もないか』


 ネル・フィードはそっとアイリッサを寝かせ、立ち上がった。


め、へばったのか? これで心置きなくアンタをぶっ殺せるな。もう1発いくぜぇ。極黒邪龍滅殺波だ……!』


 ネル・フィードは大きく息を吐き、声を震わせながら言った。


『アイリッサさんをと言うのはやめてもらえないか。なんか、さっきから妙に、なんていうのか……』


『はあ? なんだあ?』


 感情は極力表に出さない、沈着冷静なはずのネル・フィードが自分でも戸惑う感情。それは子供にもあるであろう単純なものだった。


『アイリッサさんをけなされると、なぜだか……』


『くそブスをくそブスと言ってなにが悪いんだよ。ヒャッハー☆』








『お前さ……』


『は?』




























『なんかすっげぇ! ムカつくんだよおおおおお──────ッ!!』


 シュゴゴゴゴォォォオオオッ!!


 ドォォォオ───────ンッ!!


 今までになく、ネル・フィードのダークマターは熱を帯びていた!!



「ぷひー……ぷひー……」



 そしてアイリッサはよく寝ていた。

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