第271話 ナイスアドバイス

「ゔゔゔっ……!! ぐがあ!」


 小濱宗治が息を荒げ、肩を震わせながら、低い唸り声を出し始めた。


『アイリッサさん、隠れていて下さい! 彼、悪魔の力を全開放するつもりです!』


「全開放!?」


『ええ。ピンクローザさんもそうでしが、見た目が悪魔に近づき、かなり凶暴性が増すんです!』


「分かりましたっ! エンジェル・アイリッサ、退避します!」


 ささっ!


 アイリッサは再び螺旋階段の陰に隠れた。


『がはあああっ!! 俺の可憐を傷つけやがってえっ!!』


 ボオンッ!!


 小濱宗治の姿が悪魔に近づく!!


 頭からはメリメリとツノが生え、爪、牙が鋭く伸び、髪は灰色に変色。


『no art, no lifeッ! こいつで蜂の巣にしてやらぁっ!!』


 ズオッ!!


 小濱宗治の手に、具現化されたハイパーマシンガンが握られる!


『武士道から急にサバイバルじゃないですか!!』


 スチャッ!


『闇のHK416Dダイナミック・ターボの餌食になりやがれええええッ!』


 ズガガガガガガガガガガガガッ!


暗黒虚無盾ダークマター・シールドォオ!!』


 ブオォン!!


 ピキュン! ピキュン! 


 ピキュキュキュンッ! キュンッ!


『ちっ! シールドだと!? 全弾飲み込みやがった!』


『先程のアイリッサさんのを見て、私も目が覚めましたよ』


『目が覚めただと?』


 アイリッサは躊躇なくと言って可憐の首を落とした。アイリッサの言ったブス。それは見た目のことではなく、たぶん、いや、きっと可憐の中にもあった『悪魔の心』のことを言っていたのだとネル・フィードは思うことにした。


 ネル・フィードの心の中には、できればミューバの人間は殺したくないという気持ちがある。


 自分の身を確実に隠す為に犠牲にしたアークマーダー・ネル・フィードの命を無駄にしない為にも、ここ第3ミューバに現れる腐神は自分が喰い殺す。


 それと同様に、パウル・ヴァッサーマンがしようとしている陰謀も自分が阻止し、ミューバに起こる不要な争いや現象は排除する。


 いま目の前にいるのは人間ではなく、闇の能力を操る『悪魔』であると。彼を腐神と同列のとみなすことにネル・フィードは決めたのだ。


『なので本気でいきますよ!』


 ズギュアアアアァァァッ!!


 ネル・フィードは敢えて、その手にダークマターの剣を握った。


『このカッコつけ男が! 俺と剣で戦って勝とうってか? さっきよりも強烈な剣技を喰らう羽目になるぞ!』


 ブウウウウンッ!!


 小濱宗治も再び、闇竹刀を具現化ッ!


『やっぱりこれが一番しっくりくるぜぇえっ! 喰らえやぁぁああッ!!』


『はあああ……!!』

(剣は腕ではなく体幹……っ!!)


 バッ!


あずま流ッ! 十年しゅうねん雪崩なだれッ!!』


 シュゴオオオオオッ!!




 ズドオオオンッ!!













 パキィィイ────ンッ!!




 小濱宗治の闇竹刀が吹っ飛んで消滅したッ!


『この野郎ッ! お、俺の十年雪崩を弾き返すだとおっ!?』


『ふむ。確かに。剣は体幹で振るものですね。君のアドバイスのお陰で、私は剣の扱いが上達したようだ』


 ネル・フィード、最強のダークマター生命体の本領発揮なるか?

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